金箔の肉片の記憶の断片

今になって思い返してみると、
あれはとっても…

・おもしろかった。
・不思議だった。
・悲しかった。
・楽しい時期だった。
・チャンスだった。
・怖い体験だった。
・貴重だった。

……など。
昔の出来事について、久々に思い返して、新たな感慨を抱く。
そういうことってある。

最近、夕飯を食べながら、大学時代のことを思い出した。
わしは、多摩美術大学の彫刻科、諸材料専攻だった。
彫刻科は、木とか、鉄とか、石とか、素材ごとに専攻が分かれているのだけど、
「諸材料専攻」は、ようするに材料的に「なんでもあり」なことをしたい人が集まるところで、
一番自由度の高いところだったと思う。
諸材料専攻では、年に4作品くらい作るのだけど、
制作に入る前に、メンバーと教授の石井先生、客員教授の池ヶ谷先生で小さい視聴覚室に集まって、イスを輪に並べて座って、
メンバーがそれぞれ、自分が作ろうとしている作品を、教授にプレゼンするのだ。
それを聞いて、教授が意見したり、みんなで考えたりする。

あるときは、Tちゃんが、
「肉に金箔を貼りたい」
と言った。
金箔を貼って、生の大きな肉片を覆い、作品にしたいとのこと。
教授が、「金箔…!T、肉に金箔だと?金箔…うーむむ…」と、うなる。
肉に金箔。その意味について、みんなで考え込む。

この世の中に、金箔で覆われた肉片を存在させることの意味を考える。
金箔で覆われた肉片が存在している世の中を想像する。
金箔で覆われた肉片が存在する世の中と、存在しない世の中を比較する。

みんな、「ふーむ…」と黙り込む。
頭の中を、一時的に、肉と金箔で満たす。
肉とはなにか考える。
体の一部だし、食品でもある、などと考える。
過去に誰か、肉に金箔を貼った人はいなかったけか、と自分の記憶をチェックする。
(先に誰か、やったことがあることは、価値ががくんと落ちてしまう)
視聴覚室には、沈黙が満ちる。
肉と金箔がもたらした沈黙…

教授が、「関口、どう思う?」と、わしに意見を求める。
わしは、
「ええと…食べられますね。金持ちの料理みたいに。
高いお酒に、金箔が入ってたりするから、金箔を貼った肉も食べられるはず」
と言う。
教授が、「なに、食べられるだと?」と言って、目を少し大きく開く。
そして、またみんなで考え込む―――

平日の夕食時に思い返したので、
その記憶は、なんだかとっても、精神的に離れたところの記憶に感じられた。
何しろ、明日も仕事だし、何時までにお風呂に入って、何時までに寝て、
明日は5時半に起きて、朝のうちにあの仕事を片付けなければ…。
そのためには今、あと10分で、この回鍋肉の肉片を食べきらなくては、なんて考えている時だったから。
たかだか、4年前の、自分自身の記憶なのだけど。

今になって思い返してみると、
あれはとっても…素敵で不敵で危うい時期だった。
離れてはいるけど、いつでも行き来は可能、ではある。
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by syun__kan | 2009-05-30 11:13 | 日記 | Comments(0)
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