素晴らしき休日

予定していた用事が急になくなり、
奥さんはバイトに行き、
突然、一日の休日が、わし一人に与えられた。

わし一人きり。一日、何しても良し。やるべき仕事はなんにもなし。

これはわしにとって、非常にレアなシチュエーションだ。
休日はあるが、いつもはいつも、奥さんといる。
いつも単独行動は、いつもほとんどしていない。

この一日を、どう消化しよう。
しばらく考え、わしは、川崎に工場を観に行くことにした。
川崎に行くのは二度目だが、前回は浮島というところに行ったので、
今回は東扇島というところへ行こう。

ブラックコーヒーのボトル缶と、ロッテのアーモンドチョコのセットを、
駒込のデイリーヤマザキで買う。
駒込から山手線で東京駅に。
東海道線で川崎へ。
電車のシートに座っているだけだが、頭が尋常でなく寛ぐ。

川崎の改札を出て右に行くと、非常に広い地下街に入る。
ペッパーランチで早めの昼食を。
地下街の上には、バス乗り場が密集している。
東扇島行きのバスに乗り、日本触媒前というバス停で降りる。

道の左右を工場や配管で囲まれたアミューズメント。
そこは京浜工業地帯であり、埋め立て地である。
家や、店などはない。
自動販売機さえない。
工場、倉庫、発電所とかしかない。
ほとんど人がいない。
道路をトラックが行き交う。
遠くで飛行機が発着する。

景色を眺めながらしばらく歩くと、地下通路がある。
埋め立て地から、もひとつ向こうの埋め立て地へ、
それを隔てる、海を通過するための、通路だ。

何に使われているのか、またはもう何にも使われていないのか、
全然わからない、6階建てくらいの大きな建造物のふもとに、入口がある。
「人道入口」と、看板に書いてある。
きたない階段を下りると、真っすぐ、細い通路が、延々と続いている。
「この通路は、歩行者専用です。自転車の方は、降りて通行してください」
という、女性の声のアナウンスが、ジーーという雑音と共に、
10秒おきくらいに流れる。
アナウンスの合い間を、どこまでも反響する自分の足音が埋める。
出口は見えない。真っすぐだが、真ん中が微妙に低い弓なりの傾斜がついているからだ。
だから、しばらく歩くと、真っすぐの道が始まった地点も、終わる地点も見えなくなる。
この状態が、けっこうな長さ、続く。
誰もいない。
臨死体験みたいだ。
鳥肌が立ってきた。
このまま永遠にトンネルが続くのではないかという、
あるいは、トンネルを出たら元の世界ではないのではないかという、
ばかみたいな考えが、ばかみたいだと、どこかで分かっていながらも、よぎる。
「場」というものが、どれだけ人の精神に大きな影響を与えるか、よくわかる。
アーモンドチョコを、なんでか、どんどん食べてしまう。

だが、もうしばらく歩くと、やはり出口につながる階段が見えてくる。
「人道出口」と書いた看板が見える。
「人道」って!

階段を上がって地上に出ると、
やはりそこは、何に使われているのか、またはもう何にも使われていないのか、
全然わからない、6階建てくらいの大きな建造物のふもとだった。
入ったとこと同じとこに出た気がして一瞬びっくりしたけど、別の建物だった。
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by syun__kan | 2010-10-17 21:35 | 日記 | Comments(0)
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