空飛ぶクジラ

奥さんは鬱なので、時々、特に懸案事項がないのに、落ち込む。
落ち込む理由を聞いても、「わからない」とのこと。
議題の無い会議みたいだ。
何とか切り返させようとして、となりで寝ている奥さんに、物語を語り始める。
無理やり気持ちを切り替えさせるため、無理やり絞り出す物語り。

あるところに、大きなクジラがいました。
シロナガスクジラでした。
空を飛べました。

海から出て、空を飛び、町へ向かいました。
「何か小腹がすいたな」と言って、海に戻りました。

海でオキアミを食べて、おなかがいっぱいになったので、もう一度空を飛んで町に向かいました。
「定期忘れた」と言って、海に戻りました。

海で定期を持って、もう一度空を飛んで町に向かいました。
着地する場所を探しました。
道に降りました。
丸の内のオフィス街の道に降りました。
車が迷惑がっています。
クジラは、「小腹がすいたな」と言って、車を食べました。
車は、ジャキジャキになって、クジラのおなかのヒダヒダから出てきました。
みんなびっくりしました。
大変だ!危険な奴だ!!

長老!長老!
町ででっかい奴がきて、大変です!
奴は何ですか!何だべさですか!

おう、わしは言い伝えを聞いたことがあるぞ。
わしのおじいさんの、おじいさんの、孫の、
いとこの、友達が、道ですれ違った人から聞いた。
あいつは、悪魔の申し子の鬼っ子のサタン的な、
魑魅魍魎みたいな感じのワーッとしたサムシングだ。
という可能性も無いとは言えない、
かもしれない気もする。
とは言えまい。
・・・・ぐは!!!!

長老ーーー!!!

クジラは、その辺にあるものを次々と食べました。
そのうちに、クジラの持つ、シュレッダーとしての能力が、丸の内のビジネスマンの目に留まりました。

丸の内のビジネスマンは、ミスプリントと個人情報の紙を、クジラに食べさせました。
クジラは、それをジャキジャキにして、おなかのヒダヒダから出しました。
クジラは、紙そのものは消化せずに、インクのみを食べました。
「特に、シアンが、うまい」と言っていました。
シアンが削り取られて、ジャキジャキになって出てくるので、
印刷された内容が判別しにくくなり、
個人情報保護の観点からも、重宝されました。

道は塞がり、一時車両通行できなくなりましたが、
そのうちに高架化され、問題は解消されました。

ある日、クジラは、「飽きたな」と言って、丸の内を飛び立ちました。
丸の内のビジネスマンは、オフィスの窓から外を見て、
「お、帰るのか。さようならー」と言って、
すぐに踵を返し、日々の業務に戻って行きました。
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by syun__kan | 2010-12-14 22:06 | 日記 | Comments(0)
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