ギャラリーにて

友人の個展を観に行った。
友人は油絵の作家であり、わしは作品についていろいろ質問した。
そう、わしは作品について作者にいろいろ質問をするのが好きである。
「これはどこ?」とか、「これは誰?」とか。
そう聞いて、作者がいろいろ説明してくれる場合はありがたいし、「分からない」とか「秘密」とかの答えでもいい。
どういうセンスで返答してくれるかで、作者の持つ「語るべき物語」をうかがい知ることができるものだ。

なのでわしは友人に質問していたのだが、
するとうしろから、青島コートを着た白髪交じりのおじさんが、割って入ってきた。
「絵って、描いてあるものひとつひとつに意味があるものなの?」
という切り口で入ってきた。
わしと友人の話し合いに入ってくるには、確かにまっとうな切り口ではあったが、
おじさんの本意はそこではなかったようで、モチーフの意味についての話はすぐに終わった。
続いておじさんは、「優秀であること、そうでないこと」について、微笑しながら話し始めた。
ただそれは、かなり抽象的な内容で、話の意図をわしは理解できなかったし、
友人も理解できていなかったように思う。

そのあたりでわしはなんとなく悟った。
このおじさんは、ギャラリーにたまに来る、あるタイプのおじさんであると。

わしが学生時代に、三宅感氏、戸坂明日香氏と渋谷で3人展をしていたときにも、そういう人物は来た。
その男性は、坊主頭にヒゲで、
展示会場を一通り見てから受付に座っているわしらの前に来て、
展示の感想を言っているように見せかけ、いつのまにかウサギの指人形を取り出し、
よく意味のわからない人形劇をして、そのまま帰った。

男性が帰ったあとで、三宅氏とわしは、地団太を踏んで悔しがったものだ。
坊主指人形の男性が仕掛けたことは、要するに展示をやっているわしらを馬鹿にした小さなテロであったからだ。
人形劇が始まった時点で、わしと三宅氏は、

「ニャ~!!」

「ブニュ~~」

とか言って、指人形劇のさらに上を行くシュールなことを即座にやって見せるべきであった。

話を今に戻す。
わしが今、目の前にしているのは、
友人との会話に割って入ってきて、わしを置き去りにし、
友人に対して、理解させる気の無い、煙に巻くことだけを目的とした絵画論を語っている、
青島コートを着た中年男性である。

そしてわしはその男性を、学生時代にわしのグループ展に現れた坊主指人形の男性とオーバーラップさせている。

このまま彼に、語りたいように語らせて、帰らせてはいけない。
なにしろ、彼は、わしらのような、若いアーティストをなめているからだ。
少なくとも、芸術が、「煙に巻いたもん勝ち」の世界であってはならない。

わしの体を筋緊張が走り、わしは腕と足を、差し上げた。
そして下ろす。もう一度差し上げ、下ろす。
ひじをカクッと曲げて素早く下ろす。

わしは息を吐きながら、無言で踊り始めた。
マイケル・ジャクソンが、This Is Itでやっていた、「The Drill」というダンスである。


何事?という雰囲気が、狭いギャラリーに漂う。
でもわしは踊る。

おじさんが、居づらくなったのかどうかはわからない。
でも、その場の空気はわしが持って行ったはずだ。
おじさんは帰った。

わしは、友人に、作品についていろいろ尋ね、話の続きをしてから帰った。

こちらをリスペクトしない人物に対しては、わしはリスペクトしないし、
もし攻撃されたら、攻撃を返さなくちゃいけないときもある。
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by syun__kan | 2011-03-28 17:37 | 日記 | Comments(1)
Commented by 読者 at 2011-03-30 22:50 x
グッジョブ!
そんなオッサンは無視しちゃっていいと思います
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