茶の間のアンドレ

ヤフーニュースに、天皇陛下が「自分が死んだら土葬ではなく火葬してほしい」と言ったことが出ていて、
わしら夫婦の間で話題になった。

奥さん「伝統的に、ずーっと土葬してきたんだから、
今度も土葬にしたほうがいいと思う」

わし「でも、墓地に、土葬するだけの面積がもう無いらしいよ。
だからしょうがないんじゃない?」

奥さん「いや、でも、伝統を守るから価値があるんだよ。
天皇家は世界でも例を見ないくらい古い起源の皇族なんだし、ものすごい貴重なんだよ。
歴史や伝統がものすごく長く受け継がれてるから、海外の偉い人からも一目置かれるんだよ。
それに、ずっと続いていたものを変えちゃうことは簡単だけど、一度変えたものはもう元に戻せないし」

わし「なるほど。つまりあなたは、『最強の格闘家は誰か』と聞かれたら、『アンドレ・ザ・ジャイアント』と答えるタイプなんだね」

奥さん「まったく意味が分からない」

わし「なんで?」

奥さん「アンドレさんが誰なのかも知らないので、その例えの意図するところが見えないってことだよ、このオッサンマニアめ」

わし「しかたない、説明しよう。
70年代から80年代くらいに活躍した、アンドレ・ザ・ジャイアントというレスラーがいたんだよ。
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身長223センチ、体重200キロ以上。
ビールを100本飲み、人より歯が多い。
実況の古館伊知郎が『ひとり民族大移動』とか、
『一人と言うにはあまりにも大きい、しかし二人と言っては人口の辻褄が合わない』とか形容するくらいの、
怪獣みたいなレスラーだった。
試合するときはアンドレ一人対若手二人とかのハンディキャップマッチで、
それでもアンドレがいつも勝つ。
ようするに、別格の強キャラだったんだな。
当時の認識では、アンドレには誰も勝てない、という感じだった。
アンドレこそ最強の格闘家だったのさ。何しろ人より歯が多いんだから。

でもプロレスは、相手に勝つことも大事だけど、表現したり観客を魅せたりすることも同時進行する競技だから、
純粋な真剣勝負とはやっぱりちょっと違うわけね。
だから本当のところ、アンドレが最強だったかは、正直謎なのさ。

アンドレが最強だったか否か、ヒントになるような出来事はある。
アンドレと前田日明が一対一で試合したとき、
突如、プロレス的な暗黙の了解や観客に魅せることを無視して、アンドレが前田を潰しにかかったことがある。
200キロの体重を浴びせて前田をグニャッと押しつぶそうとしたんだ。
223センチの怪物が突然本気で襲いに来るんだから、恐怖だよね。
なんでそんなことになったのかは今でも謎なんだけど、
前田は空手とか格闘技に強くて、元番長で、日頃から外人選手にも遠慮なく厳しい蹴りをバシバシ放ってたから、
アンドレが怒って『わからせてやる』って感じに、お灸を据えに来たのかもしれないね。
でも、前田は気の強い男だったから、負けずにアンドレの脚にキックしてやり返したんだ。
するとアンドレは、動かなくなって、蹴られ続けてた。
最後にごろんとマットに横になって、試合放棄したんだ。
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あまりに不可解な試合だったから、当時テレビ放送も見送られて、長年謎の試合として伝説になってたんだけど。

この一件から察すると、アンドレはそれほど強くないのかもしれない。
前田のほうが強いようにも見える。
だけどアンドレがどこまで本気だったかも分からないし、
アンドレ最強の幻想までが崩れたわけではないよね。
何しろ人より歯が多いし。

けっきょくアンドレが最強なのか否かは、謎のまま。アンドレは40代で亡くなった。

ところで、2000年代に、総合格闘技って流行ったよね?
PRIDEとかK-1とか。
ああいう、相手が骨折しようと、自分が怪我しようと、身も蓋も無く、相手に勝つことしか考えない、無慈悲な競技に出ていた、
ミルコ・クロコップとか、エメリヤ・エンコ・ヒョードルとか、
ああいう人たちは、明らかに尋常じゃなく強いと思うんだ。
多分プロレスラーとかは、かなわない。

そういう歴史を踏まえて、今になって、
『最強の格闘家は誰だと思う?』と聞いたとき、
『ああ、それは、エメリヤ・エンコ・ヒョードルですよ』とか言う人は、
火葬賛成派だと思うんだ。
現実主義者というか。
それに対して、
『ああ、最強の格闘家?それはあなた、アンドレ・ザ・ジャイアントですよ』と答える人は、
土葬賛成派なんだと思う。
伝説を守りたい派というかさ。

そういうわけで、あなたは、アンドレ・ザ・ジャイアント派なんでしょ?」

奥さん「いや、それはちがう」
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by syun__kan | 2012-05-03 13:47 | 日記 | Comments(0)
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