「アイス食いたい」
と思うとき、わしはいつも、
「愛救いたい」
というセンテンスと音が一緒だなと思っていた。
ただ、アイスを食したい状況と愛を救いたい状況に関連性が見出せないので、
「音が一緒」という事実はそれ以上には発展しないのであった。
それにしてもここ最近の仕事の忙しさと、「3月までに巨大な作品を作らなくてはならない」という心理的なプレッシャーは、相当なものだった。
奥さんにも、作品のアイデアの相談に乗ってもらったり、
ミーティングや材料の買出しに付き合わせたりと、ご迷惑をおかけっぱなし。
加えて、わしの友人が遠方に引っ越してしまうため、
仲間で集って飲もうという誘いが入ったりする。
「制作が終わるまで時間ないんじゃない?」と、
忙しい状況下でわしが飲み会に行ってしまいそうなことに不満げな奥さんだが、
仲間が揃うことに意義があるので、わしは飲み会の誘いを受諾する。
付き合いと家族サービスの齟齬。
なんとありがちな。
しかし矛盾を何とかするところに深みは生まれる。
サラリーマンの深みが生まれる。
新聞紙とガムテープの作品を屋外に置こうとするのも一つの矛盾だが、
それをなんとかしようとするところにアートが生まれる。
わしは奥さんを手放すわけには行かない。
奥さんの協調戦線なくしては、仕事だって制作だって戦えないということは、経験上よく理解している。
All You Need is Loveは、ここ何年かでよく実感した言葉だ。
ここをないがしろにすると大変なことになる。
なので仕事帰りに、何か些細なお土産を買って帰ろう、何がいいかなと思った。
「アイス食おう」
と言って奥さんにハーゲンダッツを渡すイメージがすぐに浮かんだ。
そしてわしが
「愛救おう」
という気持ちにあることに気づき、アイスと愛すは初めての邂逅をみた。
そしてミニストップに入店した。
オペラとかいうハーゲンダッツとストロベリーなんちゃらというハーゲンダッツは、
二つ買っただけで700円もしやがった。