入門

美術関係の所業をしている日を、休日にカウントするかどうかは議論の余地があるが、
休日にカウントしないのであれば、わしはここ3か月くらい休日がなかった気がする。
仕事のない日はいつも、制作、ワークショップ、搬入出。

そうこうしているうちに、奥さんのおなかは滞りなく膨らんで。
もう7か月。
そろそろ受け入れ準備をする必要に迫られていた。
市の運営するパパママ学級に行こうとしていた日も、急きょ入った展示内覧会のため行けなくなり。
奥さんの、

「赤ちゃんのことを考えろ!そして準備をするんだ、準備をな!今すぐにだ!」

という思いは臨月だった。
そしてこないだの日曜、気づいたら、仕事はなく、美術関係のやるべきこともなかった。

わしらは小雨の中、バスに乗って、ベビーザらスに行った。
最初に服を探した。
ハンガーの首に「50‐60」とかのタグがあり、
それは身長を意味することがしばらくしてわかった。
奥さんは、まだ購入していないものの、通販やネットでかわいいベビー服をしこたま探して検討中だったので、その場で買うべきものは特になかったが、
実物を見るのは、イメージが湧いてよかった。
赤ちゃんの着ている伸縮性のあるつなぎのような服は、ロンパースという。
「I ♥ papa」と書かれたロンパースを買おうか少し迷った。
結局そのコーナーでは、出産の際の入院で必要になるという、ガーゼの10枚セットを買った。

その後、抱っこひもを探した。
わしは「ELGOBABY」というメーカーのタグを、まちがえて「えるごばびー」と読んでしまい、
悔しかったので「えるごばびー」と呼び続けた。
抱っこひもは、あこがれの一つであったが、
実物は非常に複雑にオビとバックルが絡み合う一つの抽象形態で、
トルソのマネキンから外し、試着しようとしたが、
どのバックルをどう繋げば縦抱きから横抱きにチェンジできるのか試行錯誤し、結局諦め、
マネキンに元の形に装着することさえできなかった。
結局、今日置いてなかったのも試したいからということで、抱っこひもの購入は見送った。

その後、ベビーカーを見た。
二段になった棚に、華奢なものから重厚なものまで、数十のベビーカーが並んでいた。
奥さんはやはりリサーチ済みで、わしは奥さんの指名した品を棚の二段目から降ろした。
見た目よりとても軽かった。皆が持ち運んで使えるためにはこのくらい軽くないとだめなのだろうと、納得した。
しかし、ベビーカーも非常に複雑な構造をしており、
目の前の「ロック中-ロックが外れています」のスイッチを切り替えても、
いったいどの場所のロックが切り替わったのかわからなかった。
サイドに、「畳むときは、こう」ということが書かれたタグがついていたので、その通りにレバーやらスイッチやらをいじって全体的に引っ張ると、
ベビーカーはグインと脈動して畳まれた。
そういえば、町のお母さんたちも、確かにこのようにして畳んでいた記憶があると思った。
しかし、それを元の形に開くことができず、畳まれたままで棚に戻すわけにもいかず、
わしらは店員を呼んだ。
店員さんは、
「開くんですか?ここにね、ロックがあります」と言うのと同時に、
0.5秒でベビーカーを元に戻した。
わしは、「あ、ああ~ありがとござます」と答えて、ベビーカーを元の棚に戻した。
別のベビーカーには、試しに乗せてみる用の、
「6か月 7キロ」と書かれた赤ちゃん人形が乗っていた。
試しに持ってみると、非常にずしんと重かった。
半年でこんなになるのかーと思って、しばらく抱いて揺らしてへらへらしていた。
結局、ミニーちゃんの柄のと、水色のとで決選投票になり、
「ディズニーはね、世界有数の知的財産だよ」の意見が決め手となり、
ミニーちゃんが選ばれた。

次に、布団を見た。
奥さんの好きなハリネズミ柄の布団があり、
奥さんは「これねーいいんだよねー」と言っていたが、
他にネットで目をつけている、「布団自体は無地なものの枕が立体的なハリネズミ」という品物と迷っていて、
そのあたりは正直どうでもいいわしは、「どっちも買って一つにして使えば?」などと適当なことを言っていた。

最後に、身辺的なこまごましたものを見て、
小さいのが連なったハンガーや鼻水吸い機やアヒルの形の湯温機等を買い、
ミニーちゃんの柄のベビーカーに乗せて帰った。

その夜、わしは赤ちゃんを抱く夢を見て、
非常に珍しく幸せな気持ちで目覚め、その話を奥さんにしようとしたが、
奥さんはあまり目覚めが良くなかったようで、見送った。
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by syun__kan | 2013-09-10 22:58 | 日記 | Comments(2)
Commented by pekoling at 2013-09-13 19:21
なんというか、ジンワリと感動です

初めて父親になるって実はすごい体験ですよね
女性は生理的に否応無く実感できますが、男性は観念でしか受け取れませんからね
それを実感にしていく過程が素直に伝わります

楽しみに読ませていただいています
Commented by syun__kan at 2013-09-16 09:53
がんばります。
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