入学式

母校、多摩美術大学では、今日入学式が行われた。
どうして知っているかというと、卒業生代表として、入学式で挨拶をすることを、数ヶ月前、打診されたからだ。

多摩美といえば、ゴッドファーザー・三宅一生氏をはじめ、ものすごいメンバーを卒業生として輩出している。
わしがそれを「代表」することなどできない。
まあ、わしは以前「出前アート大学」などの企画で校友会の方と繋がりがあったので、
今回は声をかけていただいたのだろう。何はともあれ光栄なことだ。

しかし今日わしは、自分の職場で仕事であった。
わしの職場も来週入学式を控えている。準備をしなくてはならない。
なので打診は申し訳ないがお断りさせていただいた。
わしなんかより、もっとふさわしい方が、今日挨拶されたはずである。

わしはかわりに、ここに、ひそやかに、今日多摩美に入学する方々に思いを馳せ、挨拶を書く。

新入生の皆様、おめでとうございます。

多摩美では、より多くお金を稼ぐためのメソッドや、会社でうまくやっていくためのメソッドや、より良い配偶者を得るためのメソッドなどは、
あまり教えてもらえないかもしれません。
まあ、個別に教授に押しかけて尋ねたりすれば、ひょっとしたら秘密で教えてもらえるかもしれないけど、
基本的には、普通に学習に参加してる分には、あんまり教えてもらえない気がします。

しかしそのかわり、必ず、卒業後のあなたを一生支え続ける、人生観、哲学を身に付けることはできると思います。
今から少しややこしい話をします。
美術とは、「美」の術です。
それはつまり、お金とかに人生を左右されるのではなく、美しいか否か、ということによって、生き方を決めていくことの哲学だと思います。
人生の岐路に立ったとき、またはもっと小さな選択を迫られた場合にも、
どういう風に舵を取れば、美しいか。
ということで判断できる。
そういう価値観を持つことができるんじゃないかな、と思います。

そんなの意味無いじゃん、と言う人はいるかもしれませんが、
でも私は、本当の意味で美術ができる、美術の哲学を持っているということは、
すごく強いことなんじゃないかなと思います。

例えば私は、お金を全て失って、キャプテン・クックのように住所不定無職になってしまったとしても、
…これは例えばですよ?
多摩美にいると住所不定無職になってしまうということではありません。例えばです。
住所不定無職になってしまったとしても、絵を描いて作品を作ったりすることで、満足できるでしょう。
その辺に落ちている木や石なんかを使って、彫刻を作ったりして、
おなかは依然として減っているけれども、何らかの喜びは得ることができるでしょう。

もし美術の能力がなければ、お金を全て失った時点で、絶望しかないでしょう。
でも私たちは、けして絶望することは無いのです。
美術の持つ力って、そういう面があるんじゃないかなと思います。
私は4年間で、それを身に付けました。
お金を稼ぐことには直接役立ってないけど、多摩美のおかげで私は一生絶望しないでしょう。

まあ、美術は解釈が多様で、私がいま話した美術の解釈も、無数の中のワンオブゼムです。
でも、何かしら、卒業後の一生を支えるような哲学を、この4年間でぜひ身に付けてもらいたいと思います。
答えはそれぞれで良いのだけど、努力すれば何かしらの大切な哲学を得ることができる、
そういう教育力を、この学校は必ず持っていると確信しています。
がんばってくださいね。
[PR]
by syun__kan | 2014-04-04 23:10 | 日記 | Comments(0)
<< 悲鳴 虚しい >>