ボリさんも人間に

ボリさんは人智を超えた完全なる神秘的な存在である。
摩訶不思議な妖精である。
宇宙的と言っても良い。なぜって…

奥さんの中で、ほんの小さな塊として誕生し、
へその緒を通じて、奥さんから栄養をもらって少しずつ大きくなり、
やがて人の形を成し、
46センチ、2636グラムになった時点で外に出た。
人間の中で人間が生成された。

外に出てからは、母乳100パーセントで育てられた。
それでどんどん大きくなった。
生まれた直後は平均以下だったけど、現在、身長は平均値を上回っている。
母乳以外は摂取していない。
奥さんから分裂するように誕生し、奥さんから出てきた母乳のみで大きくなった。

成分表示的には、奥さん分100パーセントと言える。
全て奥さん由来で体が構成されているんだ。
すごくないかい?

なんて純粋な存在なんだ。
妖精だね。天使だねこれは。

しっかーし!

生後6ヶ月が経過し…
ついに離乳食を食べる必要が生じたのだった。

奥さんも葛藤していた。離乳食は母子分離への第一歩でもある。
お母さんなしでは生きていけない状態からの脱却である。
そして、社会で生産され、流通する作物を口にするということは、
食生活における社会的存在への第一歩にもなる。

葛藤を抱えつつも、ここしばらくの間にいろいろそろえた道具で、奥さんはおかゆを作った。
ハウツー本から学んだとおりに、お母さんが横抱きにし、専用の棒みたいな食器で口に入れる…
最初の日は、小さじたったの一杯だけ。
本には「はじめは飲めずに口から出てくると思いますが、すくってぜんぶ口に入れちゃって食べさせてね」みたいに書いてあったが、
セオリーを無視して積極的にパクパク食べるボリさん。
さらには食器を自ら手に持ち、アグアグして「もっとくれ」と言わんばかり。

ああ、喜ばしいことだとは分かっているが…

ついに君は、外部の物を摂取してしまったんだね…
俗世にまみれてしまったんだね…
これが米だよ…
秋田産あきたこまちの無洗米だよ…
米にもいろいろあってね、
産地とか種類を限定してブランド化しているんだよ…
秋田で生産されて精米所だの問屋さんだのいろいろ巡ってヤオコーにたどりついてね、
2280円の値札を付けられてたんだよ…
ああ、なんて俗世的なんだ!!

わしも奥さんも複雑な思いだったが、
しかしこうして社会を食らい始めた姿に感動して涙ぐんだ。

こうしてボリさんは妖精ではなくなり、人間になったのであった。

奥さん…
ボリさんが自立していくのはある意味で残念かもしれないが、
何か一つわしからかけてあげられる言葉があるとすれば、
離乳食の割合を少しずつ増やして、いずれ卒乳させたあかつきには、
酒が待ってるぜ。
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by syun__kan | 2014-06-12 22:38 | 日記 | Comments(0)
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