オン・ザ・フロア

迫り来るボリさん。
わしのメガネが狙われている。
床に寝転がっているわしのメガネが狙われている。
赤ちゃんはどうしてこう、メガネが好きなのか。
しかしわしも対応する。
顔めがけて伸びてきたよだれに濡れた手を、かわして、
「んー」
の声と共にくちびるで甘噛みする。
そして
「んまっ!」
の声と共に離す。
「むきゃー」
と笑うボリさん。
再び伸びてきた手もまたかわし、「んーーーまっ!」とその手を甘噛みして離す。
笑うボリさん。
この「噛んで離すムーブ」は、先週開発した。
航空祭でレジャーシートに座っているとき、開発した。
ボリさんが持ってかじっていたペットボトルを、わしが口で甘噛みしてひっぱり、
「んまっ!」
と離すと、ボリさんが大ウケ。
「まさか大人が、わたしの持っているものを噛んで引っ張るとは!大人がそんなことするとは!」
という感じ。
ウケたので、繰り返す。
「んーーーーーーっまっ!」
爆笑するボリさん、その様子を奥さんがスマホで動画に撮った。
しかしわしはその映像を見てがっかりする。
目を見開き、ペットボトルめがけて口を開いて、パクッと噛もうとするわしの横顔が、
想像していたよりずっと気持ち悪かったからだ。
コイのようだった。
でも気にしてはいられない。
ボリさんと遊ぶときは、ボリさんが楽しいことが最優先事項だ。
気持ち悪くてかまわない。
そういう所信で、今もメガネを掴もうとするボリさんの手を甘噛む。
するとボリさんは、指を曲げ、
多忙さによってできたわしの下くちびるの口内炎を的確にガリッとする。
「ギャイン」
と言ってのけぞるわし。
ふいに視界が黒くなる。
ミニチュアピンシャーのハルちゃんが、嫉妬心からわしとボリさんの間に割って入ったのだ。
わしの口をブシュブシュと舐める。
もうすぐ生後11ヶ月のボリさんと、犬のハルちゃんは、とても良い友達関係を築きつつある。
ボリさんはメガネからも甘噛みからも気が逸れ、ハルちゃんの背中をベシベシと叩く。
そのまま立つ。
つたい歩きは2ヶ月前からバリバリにやりまくっていたが、
最近は掴まらずにすくっと立つようになってきた。
それにしても、赤ちゃんのこの、とにかく何かをやろう、
やりたい見たい、できるようになりたいという、
前進性は、感動する。
ドゥーサムシング!!
疲れてなるべく動きたくありませんといった体のわしから見ると、その前進性だけでも充分に感動に値する。
そういえば昨日はついに、一歩あるいたのだ。
何も掴まらずに立ち、そのまま一歩。
ついに一歩を踏み出したよ。何も教えてないのに…。
すごいなあまったく。
今も、すくっと立ったボリさんを見て、
わしは反射的に秒数を数えている。
今までわしが見た中で、掴まらずに立った最長記録は19秒である。
それを超えるか…
しかし足元をハルちゃんが横切ったことでボリさんは3秒でペタンと座る。
ハルちゃんがうなぎのおもちゃを噛む、ボリさんはそれを見る、
二人はうなぎのおもちゃを取り合う。
しかしそれほど身が入らないボリさんはすぐハルちゃんにうなぎを受け渡してしまう。
「もっとがんばりなよ。こうだよ」
と言って、わしは這ってハルちゃんの噛んでいるうなぎのはしっこを噛む。
ハルちゃんは、
「まさか人間がこんなことするとは!大の大人が!」
という感じで驚き、パニックになっている。
「ウウウウ」
と、うなってみせるわし。
その間にボリさんはつたい歩きしてゴミ箱を倒しにいく。
このように綿々と遊びのようなサムシングは続く。
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by syun__kan | 2014-11-09 22:14 | 日記 | Comments(0)
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