男二人が、宙に浮いている。
何の説明も無い。のっけから浮いている。
二人はとびっきりのマッチョだ。
一人はイヤリングをしている。
もう一人はおでこが広い。
そこにもう一人、マッチョが現れる。
彼も浮いている。
彼は、ピンク色で、スキンヘッドだ。
スキンヘッドで、その上、頭が長い。
ピンクのマッチョと、もといた二人のマッチョは、闘っているらしい。
ピンクのマッチョは、非常に強い。
何だかすごいものを、ふたりのマッチョに対して、出す。
爆音。光。
二人のマッチョは歯が立たず、岩に埋もれて危ない状況になる。
イヤリングをしているほうのマッチョが、おでこが広いマッチョに対し、
「合体しよう!」
と持ちかける。
そして片方のイヤリングを差し出す。
しかしおでこが広いマッチョは、イヤリングをしているマッチョに対し、
何やら煮え切らない思いを抱えているようで、それを拒否する。
日曜の朝、ごはんを食べているボリさんに、イスに座る持続時間を延ばすためにいじらせている、わしの携帯電話のワンセグの画面の中。
わしは現在もテレビを所有していないし、少年時代には折り紙とかばっかりやっていたので、同世代の人が見ているはずのアニメ作品などを、ほとんど鑑賞せずに過ごして来たが、
しかし、一応、一般常識として、主要な作品名と、キャラクター名くらいは分かる。
これは、おそらく、ドラゴンボールという番組の再放送だろう。
イヤリングをしているマッチョは、どうして今日はイヤリングをすることになったのかはわからないが、声の調子からして、「ごくう」だ。
そしておでこが広いマッチョは、一般的に「べジータ」と呼ばれている、あいつであろう。
ピンクのマッチョは、見たことなかったが、先ほどから「まじんぶう」と呼ばれているのでそれが名前であろう。
これは、どのような事情があったが知らないが、ごくうとべジータが、まじんぶうと闘っているシーンなのだ。
ピンクのマッチョが、
「そっちが攻めてこないなら、こっちから行くぜ!」
と言って、とどめの一撃を狙って飛び込んでくる。
危ない。
おでこが広いマッチョは、ついに、イヤリングをしているマッチョと合体することを受け入れ、
片方のイヤリングを受け取る。
そして自分の耳につける、
しかしおでこが広いマッチョは手袋をしているためか、なかなかイヤリングはスムーズに装着されない。
わしは、早くしないとピンクのマッチョの一撃が届いてしまうのではないかと心配になる。
さらに、この期に及んで、イヤリングをしているマッチョは、
「合体したら二度と元には戻れない」
という衝撃の事実をおでこが広いマッチョに告げた。
おでこが広いマッチョは、「何!?」と怒りながらも、イヤリングをつけようとする、
しかし手袋をしているためか、やはりなかなかスムーズに装着されず、
わしはヒヤヒヤする。
それなりに時間がかかったように見えたが、幸いピンクのマッチョの一撃はまだ届かず、
無事イヤリングは装着され、
二人の男は光の中で合体した。
二人を足して2で割ったような風貌の男が、煙幕の向こうから、ポーズを取って現れた。
なんなんだこの展開は。