大阪ツアー(前編)
「7月に大阪行くんです。
電車で行って、一泊して、
太陽の塔を見て、大阪城ホールで新日本プロレス観て帰ってくるんです。
一人で。
これが、今のわしの掛け値無しのモチベーションなんです。
大阪のために、それまでの間、わしは全てのことをがんばるんです」

と、工作本の編集の下井さんに言ったら、

「まだ半年後じゃん!」

と、つっこまれた。
確かに、あれは1月のことじゃった。

しかしだ、わしは堅気の仕事に就いた妻子ある31歳である。
自分のためだけに、そう、オンリー自分のためだけに丸二日間使うことなど、
そうそうできることではない。
(と、思ってるんだけど、これって一般的?)
まあとにかく、わしにとっては、半年間待つだけの価値が、十分すぎるほどみなぎった、
スーパースペシャルレジャープロジェクト!
なのであった。

超満員の仕事も家庭もアートもなんのその。
大阪のためならエンヤコラ。
雨の日も風の日も。

そしてついに…時は来た!

7月4日は土曜日だけど半日仕事あり。
終業後、レジャースタート。
まず、ランチを兼ねた会食がある。
ここで一杯ビールを入れてしまったのが、若干ミスだったかもしれない。
いや、ミスと分かっていてもミスりたいときがある、みたいなことを大人になって知った。
とにかく、体力勝負の教員仕事。
週6日を駆け抜けた体は手指が震えるほど疲労困憊、そこへのアルコール注入で、わしはやや意識朦朧に。

若いころは単に体力が豊富だったのか?
それとも社会の荒波が正真正銘の荒波なのか?
「ホンモノの疲れ」というのは、大人になってから知った。
学生時代は、徹夜のバイトとかよくやってたけど、意識朦朧までにはならなかった気がする。

せっかくのレジャー、ボーっとしていてはもったいない。
なるべくシャキッとしようと心がけながら、わしは川口へ。
多摩美彫刻科時代の同級生、山崎由佳さんが展示をしているのだ。

ライトノベルのタイトルでも何でもなく、事実として、僕は友達が少ない。
少ない上に、その貴重な存在と、会う機会を積極的に設けようとする習慣がない。
アーティストの三宅感君も複顔研究者の戸坂明日香さんも、
親友と言っちゃって恥ずかしくない存在だとわしは思ってるけど、
思えば2年くらい会っていない。

だめだな、これでは。
変な意地的なものを張らずに、ちゃんと友達と会って行かないと、
本当に会わないまま、いつの間にかおじいさんになってしまう気がする。

山崎さんと会うのは、やはり実に3年ぶりだった。
クスノキを彫った作品が並ぶギャラリーに一歩踏み入れた途端、
そこは周囲の環境から切り離された、全く違う時間と価値観に満たされていた。

…このセンテンス、最初、「周囲の環境」を「俗世間」とタイピングしようとしてやめた。
世間が卑下すべきもので、ギャラリーの中こそ崇高なものである、みたいなニュアンスは、わしの意図と違うと思ったからだ。
その後、「俗」を取って「世間」とタイピングしようとして、それもやめた。
それだと山崎さんがロビンソン・クルーソーみたいだからだ。

どっちが善くてどっちが悪い、という考えは基本的に好きでない。
その決めつけをやめたところから、思考の深化は始まると思っている。
世間的な価値観、アート的な価値観、どっちもあって良い。
みんな違ってみんな良い。

でもとにかく、その空間はある程度切り離された感があって、
仕事と飲酒でしぼりたての雑巾のようになっているわしにとっては、
それが非常に気持ち良かった。
切り離されたかったのだ。
山崎さん、ありがとう。
また機会を作ってちゃんと会おう。

その後、どういう経路だったか、とにかくわしは品川へ。
サンドイッチとビールを買って、新幹線で新大阪へ。
車内ではあまり寝れず。
森博嗣ミステリィを目で追う。

新大阪に着き、乗り継いで大阪へ着く。
21時40分くらい。
自分が身構えていることに気付く。
警戒している…何に?

そうだ…たぶんわしは、何年も前に、西日本にて、
関西系の方々と食事したとき、
関西系のノリツッコミの会話にまったく付いて行けず、
輪に入れず
それが軽く、文化的なトラウマになっているのだ…
まるで、バンコクに着いたときのような精神的な身構えっぷり。

大丈夫だ関口。落ち着け。ただの日本だ。
そして君は、もういい歳した大人だ。
ナイーブな青少年ではない。

ホテルを探す。
カプセルホテルだ。
優雅のとびっきり逆だ。
コンチネンタルとも、真逆ではないにしろ、120度くらいの別角度だろう。

雨が降ってきた。
絶賛ガラケーユーザーの関口君は、小さな画面の地図だけが頼りで、
小一時間彷徨ってしまう。
旅先での彷徨いはそれはそれで楽しいのだが。
雨はあんまり好ましくない。

ようやく着いた男性限定カプセルホテル、
すごく清潔というわけではないが、
温泉、サウナも有り、
広いカーペット部屋には館内着をはだけたおっさんの群れが203高地のように寝そべり、
気兼ね無いことこの上ない。
何だか妙に楽しかった。
普通のビジネスホテルにしなくて良かった。

0時半、わしは上段のカプセルにて就寝する。
明日に備えて、意識をシャキッとさせねば。
しかし、疲れ、そして慣れない飲酒とサウナのせいで、頭痛が開始。
わしの眠りはなかなか深まらなかったのであーる。

後半へ続く。
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by syun__kan | 2015-07-05 23:26 | 日記 | Comments(1)
Commented by くるまる at 2015-08-14 09:09 x
昨日ここを知って読み始めました。
凄いなぁ…って思って会社で思わず話したよ。
作品も是非現物を見てみたいと思った。
んで文章を読んで思ったんだけどエッセイ書いたら読んでみたいし買いたいな。
ありがとう。
なんか勝手に力を貰ったよ。
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現代芸術家、関口光太郎の日記。
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