大阪ツアー(後編)
午前3時半に一度起きて、アクエリアスを買って飲んだ。
これで頭痛はある程度収まる。

再び上段カプセルへ、まどろみながら7時半起床、
寝そべるおっさんの群れに紛れて館内着のまま鮭定食の朝食。

おっさんの群れは、とても静かだ。
一人で来ている人が多いこともあるが、友達同士も多い。それでも、とても抑えてしゃべる。
女子なら、こうはいかないだろう。
おっさんとは、かくもおしとやかな存在である。

電車で万博記念公園へ向かう。

いかん、まだ意識が朦朧としている。
せっかく太陽の塔に会いに行くのだ、失礼に当たる。
コンビニでレッドブルを一缶買って飲む。

大阪モノレールに乗り継ぐ。
しばらく行くと、車窓から見える景色において、森林の向こうに黄金の顔がのぞく。

やばい、来た…。
いよいよだ。

万博記念公園駅を降り、太陽の塔に向かって慎重に歩を進める。
面接に向かう就活生のよう。
もう見えてる。
おそらく日本で一番有名な現代美術作品。
視界の右のほうには、70年万博の名残なのか?オレンジ色の球体のオブジェも見えるが、
そんな正確な幾何学形態は、まったく太刀打ちできない。
森林だってかなわない。
手びねりによって作られた、太陽の塔の有機的なフォルムは、たまらなくセクシーだ。
公園入場口前の売店でほどよく非グルメ系のハンバーガーをテイクアウトして、入園。

花と緑に彩られ、花屋さんやお土産屋さんに縁取られた素敵な公園内に、塔はあった。
全貌が明らかになる。
いや、明らかにならない。

太陽の塔を見に行くにあたり、見に行ったことのある人に、あらかじめ、感想を聞いていた。

「ばかでかいよ」

という人もあれば、

「でかいと思って身構えていたから、意外と小さかった」

という人もいた。
そして実際、わしの目の前に置かれたそれを見た、大きさについての感想は…
何とも言えない…

普通、巨大なものは、窓とか電線とか、もっといろいろ、大きさの比較対象が付着しているものだ。
簡単に言えば、もっとディティールに密度があるのだ。
こんなにものっぺりしたものが、巨大であることはあまりない。
のっぺりしたものは、普通小さい。
だから太陽の塔は、何となく、大きいのか小さいのか、把握しづらい。
近寄って見ても、それは変わらない。
遥か上にあるはずの「顔」は、遠いところにあるはずなのに大きい。
そして鑑賞者から「顔」までは、さえぎるものも、大きさの比較になるものも無いのである。

この「印象の把握できなさ」こそ、巨大な作品のミソなのだと思う。
離れてみても、近寄っても、いつになっても「だいだいわかった」と思えないのである。

わしの頭には、わしの地元に近い、高崎観音が思い当たる。
あれは確か、45メートルくらいだった。
初代ウルトラマンと同じだ。
太陽の塔は、65メートル。
大きさの印象は、近い。
二つの大きな違いは、高崎観音が宗教的な造形物であること。

マンションとか、商業ビルとか、公共施設とか、そういった実益のあるものについては、
人々はどんどんお金を注ぎ込み、巨大なものを作る。
実益的なもの以外で、巨大なものがあるとしたら、それは宗教的なものだ。基本的には。
大聖堂、大仏、大観音。

太陽の塔が偉大なのは、実益でも宗教がらみでもないのに巨大で、しかも45年間も保存されているということ。
まるでオリジナル岡本宗教。
いや、実際そうなのだろう。
一人の男のオリジナル宗教みたいな情念が、70年エキスポという一大チャンスと非常にうまくフュージョンし、
築き上げた一夜城が、まさかの普遍化、という感じ。
45年も保存されているのは、それが自分勝手なものではなかったからだ。
いろんな人に影響を与え、魂を鼓舞したのだろう。
太陽の塔に影響を受けたと自認するアーティストは多い。あまりにも多い。
多くの人が、このオリジナル宗教に、オリジナルな祈りを捧げたのだ。
太郎賞という賞に導かれたわしも、その一人なのだろう。
オリンピック・パラリンピックに向けた文化イベントを提案しろと言われたときも、
真っ先に浮かんだのはこの太陽の塔だったし、
実際に描いたスケッチも、太陽の塔を超えるために「70メートルを目指す」と設定されている。

太陽の塔の周りを、近寄ったり引いたりしながらぐるぐる歩いたこの記憶は、
一生頭にこびりついて離れないものになるだろう。
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それからわしは、奥さんに勧められていた、公園に隣接する国立民族学博物館へ。
この博物館も、掛け値なしに凄かった。
古今東西。
…それはすなわち、古いものも新しいものも、あらゆる範囲で。という意味である。
響きはかわいいけど大風呂敷もはなはだしい言葉だ。
しかしここにあったのは、古今東西と言って差し支えない。
古今東西の、人が作った物が展示してあった。
それぞれの土地の、文化の特徴を示すもの。
お祭りや宗教的な儀式に使われるもの、衣類、仮面、生活の中の道具、楽器などなど…

わしは自然物も好きで、自然物90パーセントで展示されてる動物園、水族館、植物園は大好きだ。
でも人工物はもっと好きで、自然物と人工物がフィフティ・フィフティな国立科学博物館なんかもお気に入りだ。

しかしここ、国立民族博物館は、人工物100パーセント。
これ、東京にあればいいのに…。
頭というなべを木べらで底の方からそっくり混ぜっ返されるような刺激を受けた。
そう…半年に一度くらいは、頭の中を底の方からそっくり混ぜっ返さないとね。

実は依然として、頭はぼーっとしていた。
公園のベンチで休憩、
その後モノレール、電車を乗り継いで大阪城ホールへ向かう。

物心ついた頃から大好きだった新日本プロレス、
一時は人気低迷から会社が傾きかけたけど、ここ数年で奇跡的に息を吹き返し、
今宵は21年ぶりの大会場・大阪城ホールに再進出なのである!!
会場前の屋台でたこ焼きを頬張る、わしの心も誇らしい、否、長く見ているファンなら皆誇らしく思っているはずだ。
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16時開始、最終的に20時過ぎまで続いた全10試合の大トリは、
AJスタイルズ選手対オカダカズチカ選手の選手権試合。
オカダ選手は団体を背負って立つ若きエース、
「新日本プロレスにカネの雨が降るぞ!」が決めゼリフの、通称レインメーカー。
入場時にはオカダ選手をデザインした模擬紙幣が雨のように舞う大掛かりな演出、
その中で太陽の塔のように両手を広げる。
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この美しき。
そう、話を蒸し返すことになるが、
オカダ選手のこのポーズは、わしのオリパラへのアイデアの、着想の元にもなっている
昼に見た太陽の塔との類似は、たぶん偶然、というより何かのご縁。
試合は感動的な白熱の好勝負の末、オカダ選手の勝利で大ハッピーエンド。

全試合終了後、オカダ選手の模擬紙幣を入手すべく、選手入場ゲート付近の座席へ拾いに行く。
しかしあんなにたくさん撒かれていた模擬紙幣は、すべてファンに拾われてしまっていて、一枚もない。
すると、たくさん拾っていたファンのお姉さんが、一枚分けてくれたのである!
素晴らしきプロレス女子。
この日記を読んでいる可能性はほぼゼロだが、
この場を借りてお礼申し上げます。
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その後、わしは大阪駅に移動。
東京に帰る電車は0時37分発のサンライズ出雲。
寝台特急だぜ、イエイ!
それまでだいぶ時間があり、携帯の充電もしたかったのでネットカフェに入る。
そこで昨日の日記を書く。

0時を過ぎ、わしは大阪駅の改札を通る、そこで駅員に呼び止められる。

「お客さん、これ7月5日の0時37分発の切符ですけど、
もう0時過ぎて、今7月6日なんですね」

は?

「この切符、24時間前にもう出てる電車の切符ですね。
買い間違えて来はったんですね。
ほんとは7月6日の0時37分発買わなあかんかったんですよ。
今ならまだ買いなおせますけど、
もう買っちゃったやつは、払い戻しできません」

オーマイ&ガーファンクル!!!

というわけで、わしは知らない間に、凡ミスにより、
一万円をドブに捨てていたのであった。
まるでレインメーカー紙幣と引き換えに…

まあいいさ、また一年働けってことだな。
貯めて、また旅行するよ!

翌日、東京に戻ってきて、奥さん、ボリさんと48時間ぶりに再会。
切符の件を上申。

わし「というわけで、わしは一万円かけてかっこうのブログネタをゲットしたんですよ」

奥さん「…体張ってるね」
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by syun__kan | 2015-07-06 22:13 | 日記 | Comments(0)
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現代芸術家、関口光太郎の日記。
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