髪型クライシス

明日から新学期なので、髪を切りに行った。
夏の間ツーブロックマッシュルームみたいな感じだったので、もう少し普通にしようかと。
1500円の店で。

襟足について、
「今はツーブロックになっているけど、グラデーションにしてください」
と要望を出す。
すなわち、下を短くして、上に向かいだんだん長くして、上の長いところと合流してほしいと。
そういうイメージを持っていた。わしは。
しかし美容師さんは、グラデーションにするには長さが足りないと。
なんとなく威圧的な美容師さん。
「じゃあ、襟足は切らなくていいです。
上の長いとこだけ短くしてください」
と、言えばよかったんだ。
今思えば。
でもわしは、
「じゃあ、グラデーションにならなくてもいいから、刈り上げます」
と言ってしまったんだ。
ここが分かれ道だった。
わしのイメージ図から、微妙に、しかし決定的に遠ざかる、分かれ道。

出来上がったと宣告され、合わせ鏡で後頭部を見せられる。
そこにいたのは、ハードなコボちゃんであった。

これはまずいな…

明日から新学期なのに。

学校は世の中の基本を教えるところなのに。

ハードコボちゃん頭の32歳は応用編もいいとこだ。

しかしながら、今から「抜本的に改革してください」とは言えないし、
美容師さんも何となく威圧的だし、
わしは何食わぬ顔で
「これでいいです」
と言い、
会計を済ませて店を出た。

プチパニック。
18時半の路上でプチパニック。
どうしよう、明日仕事行かれへん…

夏休み中やったら、問題ない。
しかし、学校っていうのは、取りも直さず、世の中の基本を伝えるところ。
この頭は、多分アウト。

しばし逡巡の後、わしは、最終手段に出るしかないと判断し、歩き出す。
すなわち、ハシゴである。
美容室のハシゴ。
何だか、悪夢を見ているみたいだ。

現在18時45分。開いてるだろうか…
別の1000円カットの店を目指す、
良かった、遠くに見える店の明かり。
入店。

「切ったばかりなんですけど、イメージと違くて、
もう少し普通にしてもらえますか」

と述べるわし。
我ながら、何じゃその要望は。

「今のかっこいいじゃないですか」

と言われる。
ああ、そう言わんと…
確かに、かっこいいんよ、もしわしが美大生ならな…
しかしわしはもう、一端の社会人なんよ…

「そこを何とか。
ものすごい短くてもいいですから。
趣向とか狙いとか何でもいいから、とにかく、普通に…」

とのことで、修理が始まった。

わっしわし切られていく、わしの髪。
「普通になれ、普通になれ」と念じながら、固まった表情で鏡に見入るわしの顔を見るわし。
やがて、紡錘形の人間が出来上がった。

似合っているとは全く感じられないが、確かにさっきよりは普通だ。
いるよね、こういう髪型の人。
OK、これでいい。
ありがとう、1000円カットのお兄さん。

帰宅。
1歳8か月のボリさんは、ちゃんとわしだと認識してくれた。
しかし、笑っている。
しかも、自分の頭をぺしぺししながら。
1歳8か月なりに、精一杯、

「お前、面白い頭になったな!」

と言っている。

奥さんも笑う。
奥さんもこの間、髪を切ったばかり。
わしの勧めで、広瀬すずさんの写真を持って行って、切ってもらっていた。

わし「君はいいよね。
そんなかわいい髪型で」

奥さん「そんなことないよ、私今の髪型あまり気に入らないんだ…」

わし「ぜいたくを言うんじゃない!
かわいいじゃん!広瀬すずちゃんじゃん!
わしなんか…
ウド鈴木さんだよ…
ウドさんにも達していないよ。
ウドの大木ですよ。
植物ですよ」

わし「そう自暴自棄になるなよ。
ベッカムも、同じような髪型してたよ」

ベッカムの画像を検索する奥さん。
確かに、坊主頭の写真はあった。
うん、かっこいいね、ベッカム。

しかし、顔が違う!

その後、わしは何度も鏡を見て、現実を受け止めようとした。
必死に慣れようとした。
ジョリジョリに。
確かに、こういう頭の人はいる。
でも、その人たちが、どうしてそんなにジョリジョリと刈り上げようと思ったのか、わしにはわからない。
わからないけど、わしもそういう髪型をしている。
不思議な状況だ。
理不尽とさえ言える。
でも、別に誰も悪くない。
笑うしかない。

「笑うしかない」という状況は、
字面だけ見れば、そんなに悪くない。
泣くでも怒るでもなく、
そこには笑いしかないのだから。

そう思うことにしたよ。
髪が伸びるまでな。
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by syun__kan | 2015-09-01 00:20 | 日記 | Comments(0)
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