幸せは打ち終わったばかりの熱い通信簿

「先生の仕事が忙しくてもう制作しなくなっちゃったよ」
というような話を、美大を出て教員になった先輩方から、何回か聞いたことがある。
このブログはアーティストとしての立場で書いているが、
その実、わしも普段は5日間フルタイムで担任も持つ一教員である。
職業的には、8割教員と言って良い。
残り2割で、アーティストであろうとしている。
アートと仕事の両立。
これをあきらめようと思ったことはないし、どちらかを手を抜こうと思ったこともない。
アートをするための経済的片手間として教職を位置づける、ということなど、
想像したこともない。
できるはずもない、目の前に人間がいてそれを相手にするのだから。
自分の妄想を相手にするよりも、優先的である。

しかしながら、どちらもなるべく高いレベルで両立させるためには、人の1,5倍くらい頑張って生きことが必要になる。
よく言われることだが、一日は24時間しかないし、一年は365日しかない。
その中で1,5倍生きるためにはどうすれば良いか?
答えは、融合である。
二つの事象を、関連付け、双方の伸長を促進させるカンフル剤とすることである。

特別支援学校の教員としての仕事は、アート活動にインスピレーションを与える。
わしがほとんど毎日更新している、図工美術作品紹介のブログを見ていただければわかるだろう。
日々子どもに接しているため、アートのワークショップを行う場合も見通しを持って取り組める。
ではアート活動は、教職にどのような良い影響を与えるか。
それは、万一、二束のわらじを批判された時のためのアンサーにもなるので、
わしはすでに理論を完成させている。

第一に、美術教育は、現代美術の表現方法の拡大に従い、内容を変化させてきた。
例えば明治時代は、臨画である。臨画。
お手本の絵を見て、模写するのである。自由な発想など、求めていない。
(わしも授業で名画の模写をするが、それは各生徒がいかに名画に独自の解釈を加えるか、というところを期待している)
大正時代の山本鼎の自由画教育運動とかをきかっけにして、美術教育の考え方に革命がおこり、
まあ、すったもんだがありまして、
現代美術界で、自然に造形操作を加えて表現するアースワークが登場し、それが美術教育における造形遊びにつながり、
ナム・ジュン・パイクに代表される映像を使った表現が出てきた影響を受け、図工・美術でも映像作品が取り上げられたりするようになった。
最近の教科書には、手塚治虫が載ってる。
わしが子供の頃は、図工でマンガみたいな絵を描くと怒られたものだが。
この辺りは、日本のアニメーションや村上隆氏の作品がアートとして世界的に評価された影響を受けてのことだろう。

要するに「アート」は、「あれもアート、これもアート」「新しいアート」というように、
その概念をどんどん広げていくものであり、
美術教育の範囲もそれに従うもので、
自分が現代美術の現役選手であろう努力し、そのフィーリングやエッセンスを持ち帰ることは、
その時代における美術教育とは何かを学び取る上で、必要なことだと感じている。

今年は授業でゆるキャラをデザインし、着ぐるみをつくり、実際にゆるキャラグランプリにエントリーしたが、
これだって、現代的なアートの形だと言える。
もともとは、わしがワークショップで訪れた愛知県の施設が、段ボール製の自前のゆるキャラをエントリーさせていたので、
うちの学校でもできるな…と思ったことに始まる。
昨年行った、岡本太郎風の絵を描いてみる授業も、わしが太郎賞を受賞たことで受けた洗礼があったからこそ実施できた。
授業で使ったDVDは、岡本太郎記念館様の厚意で貸していただいた。

第二に、アート活動はわしの指導スキルを上げるのに役立つ。
職場では、普段健常の未就学児、小学生を相手に指導することはないのだが、
ワークショップでは相手にすることになる。
リアクションや発想、スピード、集団性などがやはり普段の指導対象とは異なるので、
指導の幅が広がる。
また、昨年と今年に出版した工作本では、
対面しない相手に対して、文字情報だけでどうポイントを伝えるか、
言葉選びの勉強になった。

第三に、わしの社会経験を拡大してくれる。
限られた世界の中だけで過ごしていると、深化はするが、視野の広がりに欠けやすい懸念がある。
アートをしていると、美術館の方、ギャラリーの方、編集の方、新聞記者の方、カメラマンの方、テレビの方、デザイナーや大学の先生や文科大臣まで…
様々な職種の方々と会えるので、視野が広がり、非常に勉強になる。
どのような態度で、自分の教員という仕事に向き合うか、
ヒントだらけである。

他にもいろいろあるが…
主にこれらの理由で、アート活動は教職に役立つ。
アート活動をしていなかったら、わしの美術の授業も、もっとつまらなくなっていたと思う。
しかし、体力を消耗するのは事実なので、
そのけじめとして、わしは学校の仕事を、9年間一日も欠勤していない。
学校を通して稀に来る美術教育関係の仕事は、教員としての関口に来たものと見なして、出張させていただくこともあるが、
基本的にアート活動はすべて終業後か休日に行う。

生徒と遊んでいる時、授業している時、わしは100パーセント教員だし、
担任を持っているからこそ味わえる充実感にどっぷりと身を浸している。
もし、教職とアートを両立させることに不安を持っている若者がいたら、「安心してください、できますよ」と言いたい。
それは全然矛盾しない。
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by syun__kan | 2015-12-18 23:58 | 日記 | Comments(0)
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