なかやまさん

なかやまさんは、大柄な女性である。
歳は50、プラスマイナス3というところではないか。
スーパーのレジにいる。

なかやまさんはプロ中のプロだ。
非常に素早く的確な、キレキレの仕事と、穏やかな物腰を両立している。
すごいなとは、前々から思っていた。
しかし、真剣に感銘を受けたのは、わしが仕事帰り、夜9時にフラフラの状態でお総菜を漁った日。
なかやまさんは、いつも夕方からレジに立っているから、けっこうな時間働き続けているだろうに、
夜9時でもキレキレのままだったのだ。

まさに地上の星。
わしはなかやまさんに、プロフェッショナルな仕事の流儀を学んだのである。
わしはレジに並ぶとき、なかやまさんの列だと、
「あ、今日なかやまさんだ」
と思うようになった。

ある日、奥さん、ボリさんとスーパーに行き、レジに並んだとき、
わしが「あ、今日なかやまさんだぜ」
と言うと、奥さんは
「何?」
となる。
わしは「なかやまさんはすごいんだぜ」と、
なかやまさんのすごさについて力説する。
大体において世の中を斜めに見る奥さんは、「ほんとー?」と、疑った穿った訝しんだ感じなまま、そして順番が来てなかやまさんの洗礼を受ける。

「いらっしゃいませー」と言いながらなかやまさんは、ヴァン・ヘイレンのような速さで商品をスキャンし、その内容を言葉にし、
その時ぐずっていたボリさんに対し、買った物の中のお菓子にシールを貼って手渡してボリさんを泣き止ませ、
わし、奥さん、ボリさんの3人とちゃんと目を合わせて「ありがとうございましたー」と挨拶して微笑んだ、
正確無比で細部まで行き届き、なおかつ心が通ってアドリブまで効いたその対応、それらはほんの一瞬のうちに済まされた。

この一回で、なかやまさんは奥さんを認めさせたのである。

思いが高じて、わしはスーパーの「お客様の声」の投書用紙に、
「なかやまさんのレジが素晴らしい」
と書こうか、どうしうようか、奥さんに相談した。
しかし、特別扱いされずに、普通に、素晴らしい良質なものに触れられるというのが、何か良いのではないかという話になり、
見送った。
投書が、レジ業務の方々の前でマネージャーみたいな人から発表され、
他のレジの方々からなかやまさんが妬まれたしちゃうんじゃないかというところまで想像した。
中邑真輔やプリンス・デヴィッドは、今はアメリカのWWEに行ってしまったが、
以前は新日本プロレスで、いつでも見ることができた。
あの頃は良かった。
それに近い状況が、このスーパーにおいては今であると。
なかやまさん=プリンス・デヴィッド説、
ということで、奥さんとはまとまった。

そののち奥さんは、スーパーに行った日、
レジがなかやまさんだと、帰ってから教えてくれるようになった。
「今日は午後の早い時間帯に行ったから、たぶん勤務入りたてだったのか、
キレキレの勢いがさらにすごかったよ」等。

3日ほど前、わしは夜10時過ぎに一人でスーパーに行く用事があった。
ついでに家にたまっている白トレイを、回収ボックスに出そうと思っていたのだが、
出かけるときにバタバタしていたらつい忘れてしまった。
着いて買い物したのだが、白トレイを出せなかった無念を抱え、
何か有益なことを一つできないかと考え、
そうだ、なかやまさんについて今日こそ投書しようと思った。

「レジのなかやまさんの対応がいつもてきぱきしていて感心します。素晴らしいです」

としたため、投書箱に入れ、満足して帰宅。

昨日、またスーパーに行った時、そういえばわしの投書に対し、店舗からの回答はあったかと気になり、
回答が掲示される掲示板へ行った。
しかしわしの投書への回答は、まだ早すぎたのか、無かった。

いったいわしは何をやっているのか。
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by syun__kan | 2016-04-29 16:25 | 日記 | Comments(0)
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