最近の教官は優しいようでして、教習所通いの奥さん、
教習中に女性教官とこんな会話があったようです。
教官「関口さんて、お仕事されてたんですか?」
奥さん「幼児絵画教室の講師をしてましたよ」
教官「じゃあ、美術の勉強されてたんですか?」
奥さん「ええ、美大卒ですよ」
教官「ああ、何だかすごく納得できましたよ。
関口さん、すごく雰囲気が柔らかくて、話しやすくて、
この感じは何だろうと思ってたんですけど、
もしかしたら花屋さんか何かかと思ってたんですけど、
美大だったんですね。
前にも、ムサビの女の子が生徒でいて、
その子は卒業制作にゴリラのイスを作ったそうなんですけど、
その子と雰囲気が近いっていうか…」
ということで、それって要するに、
奥さんは「美大のふんわり不思議ちゃん」という枠で捉えられたということだろうか。
確かに、奥さんは、身長153センチだし、
かわいらしい感じがしないでもないし、
ガーリーな服を着ていたりすることもあるが、
しかしよく見て。
その目にやどる、やさぐれを。
「険」を。
口元にやどる、「業」を。
美大には、ふんわり不思議ちゃんはたくさんいる。
そして、確かに、徹頭徹尾、どこを切っても金太郎あめのように、不思議なままの、
正真正銘のふんわり不思議ちゃんも、存在する。
また、一見ふんわり不思議ちゃんだけど、
例えば虫をたくさん集めて窒息死させるのが好きだったり、傷口を見つめるのが好きだったりとか、
何か深刻に変わったパーソナリティを持った、
ふんわり不思議ちゃんもいる。
しかし奥さんは、それらともちょっと違う。
彼女の生い立ち、抱えているいろんな諸々、
それらのリアリティは全然、ふんわり不思議ではない。
奥さんは、描いたり作ったりする作品もかわいらしい感じだったので、
周囲の人は、アリバイを取った気持ちになっただろう。
やっぱりこの子はふんわり不思議ちゃんだと。
違う。彼女は、シリアスなんか、もううんざりなのだ。
作品中の世界くらい、平和でかわいらしくあってほしいのだ。
学生の時に、
奥さんから、自作のアニメーション作品のDVDをもらって、
かわいらしい、
星に乗って来たうさぎが傷ついた魚を助けるようなアニメーション作品を観たとき、
わしはひとり、下宿で号泣した。