広島滞在制作・オフ日・つくる、ゆく
やはり二泊目となると慣れが生じて、
始発で走り出す電車の音も、隣人の物音も気にならず、
ハナホステルの2段ベッドで8時まで寝た。

キッチンで、冷蔵庫に保管していた食材で昨日と寸分変わらぬ朝食を食し、
9時過ぎにチェックアウト、
広島駅のコインロッカーにスーツケースを預け、
レンタル電気自転車を借りて広島市街の観光へ。

広島市街は自転車サイズの街だ。
名所がたくさん点在しているが、それぞれ微妙に遠く、
徒歩には向かない、しかし公共交通機関で巡るのも、ちょこまかし過ぎるきらいがある、
その点自転車、特に電気自転車は最高の武器だ。
貸していただいた学芸員さんは、さすがに必要なものを知っている。

最初に向かったのは縮景園という庭園。
5メートル歩けば違った景色や名勝が次々を現る、
まさにその名の通りの美しく楽しい庭園だった。
中には、戦没者が埋葬され、1987年7月31日に発掘された慰霊の碑もあった。
広島市街には、こういった原爆の痕跡が無数にある。

次に、隣接する県立美術館へ。
全国高等学校総合文化祭の美術・工芸部門を観るためだ。

高校総合文化祭は、何年か前に文教出版様の取材を受けたときに、
担当の方が、

「文化部の甲子園であり、彼らにとって最大の舞台である」

と話されていて、興味を持っていた。
そしたら今年訪れた広島が、偶然にも今年の開催地であったということだ。
しかもわしの滞在制作に、引率の先生や参加している高校生が、
何度も足を運んでくれるのだ。
これはぜひ行きたい。

それにしても、以前はわしも高校生であったし、
登山部と同時に美術部にも入部していたのに、
「高校総合文化祭」なんて全然知らなかった。
まあ、無理もないかもしれない。
わしは高校時代、全く青春していなかった、
というか高校時代の記憶がほとんどない。

実際に観た高校総合文化祭の美術・工芸部門展、
これは、正直に言って…
掛け値なしに素晴らしかった。
本当に感動した。

例えば絵画なら、47都道府県より、それぞれ4点ずつくらい出品されていた。
つまり、各都道府県のトップ4の作品が集まっているのだろう、
技術的にも、一定のレベルをクリアしていて、
何よりその、
酒もたばこも経験していない高校生たちの、
濁りのなさ。
彼らがそれぞれに置かれている状況で、
思っていること、考えていること、悩んでいることの真剣さ。
大切さが、胸に迫ってきた。

素晴らしい作品は数多くあったが、
敢えて一つ挙げるなら、兵庫の高校生が描いていた自転車のスポークの絵か。
鳥肌が立った。
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わしの故郷の群馬はどうだ?と思って観ると、
前橋東高校の男子生徒が凄く良い作品を描いていた。
こういったメンバーが、10年後にわしのライバルになっていくのか?
日本の未来は明るい。

県立総合体育館の方でも、展示しているとのことで、
自転車を向けた。
しかしそこでは展示の期間が終了していると受付の人に言われ、
かわりにグリーンアリーナでインターハイのバスケットボールをやっていて、
セコイアの木のような学生たちがロビーを闊歩していてサファリパークの様だった。
流れのまま、客席に着いてしばらく試合を見ていた。
ここでも、濁りのない青春がスパークしていた。
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その後、平和記念公園に自転車を向けた。
原爆ドームを観ながらたどり着いたのは、平和大橋、西平和大橋。
これはイサムノグチのデザインであり、若き日の三宅一生がインスパイアされたことで、
クリエイティブ界では有名であり、
そっちに疎いわしでも知っている。

ウィキペディアによれば、
1951年6月11日ノグチが広島へ訪問した時、
「6年前のいまわしい雰囲気が地面に静かに横たわっている。しかしその地上に生活する民の顔は大きな希望に燃えてたくましい」
と、人の生と死をテーマにデザインを決定し
平和大橋は「いきる」、西平和大橋は「しぬ」とノグチによって命名されていた。
事情あって「つくる」「ゆく」に変更された。

橋を観たのち、平和記念資料館を観た。
その後原爆死没者慰霊碑に手を合わせた。
日本人なら、一度は行かなきゃならないと、今まで何となく思っていたので、
来れて良かった。
オバマさんが来る来ないも大事だが、
自分が行ったかどうかも大事である。
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資料館の展示物は本当に、見るのが辛いものだった。
関口は基本的に、物事を前向きにとらえるすべは持っているが、
そんなものは機能しないのだ。
東日本大震災の時にも思った。
どう消化して良いかわからない。

公園内のベンチで、昨日美術館の職員さんにもらったパンを昼食とした。
暑い。

敷地内には国際会議場という建物があり、
高校総合文化祭の写真部門展もやっていたので、拝見した。
こちらも、本当に素晴らしかった。
彼らが向ける、年少者への目、高齢者への目、
仕事、地域、友人などへの目…
美術部門と同じく、性的要素や濁りのない表現の、
月並みな言葉で言えば瑞々しさが、本当に良かった。

高校生は社会的人間としてはもちろん未熟だが、
生命体としては、ピークにあるのかもしれない。
だとしたら、その表現が素晴らしいのも当然だ。

演劇部門も、アステールプラザという施設でやっているとパンフに書いてあったので、
そちらに自転車を向けた。
「行けば観れる」くらいに軽く考えていたのだが、
大ホールは満席であり、
生中継している小ホールに通された。
そこで静岡代表の演劇を観たのだが、
かなり面白そうで、あれは生で観たかったな~。

続いて北海道代表の上演があり、整理券を取って大ホールで観ることができた。
地元北海道の常呂町でカーリングを日本で普及させた人物を取り上げていて、
クライマックスでわしは涙が溢れて止まらなかった。

続く広島代表は、正面から原爆の物語を扱っていた。
原爆は死の物語であるが、
それを演じる高校生は、高校生活の部活動における最大の舞台で、
今この瞬間を生き、まばゆいばかりに生を燃焼させていた。
わしが資料館で感じた消化できなさを、
彼らは昇華しているのだ。

どちらも、自分の地元を愛し、誇りを持ち、
それを満天下に示していて素晴らしかった。

もう時刻は18時、
わしは自転車をイオンのショッピングモールに向け、
サイゼリアでペペロンチーノとドリアとドリンクバー(計780円)を食べ、
19時10分からの、「シン・ゴジラ」を観た。
庵野さんという監督のもと、日本で12年ぶりに制作されるゴジラ映画である。

ゴジラはわしを造形物の世界にいざなった、非常に思い入れのあるキャラクターであるが、
また偶然にも、反核が根底に流れる物語である。
広島で8月に観るのも、何かの縁だ。
今作は特に核兵器がストーリーの中心だった。
原爆ドームの写真も登場した。
観終わって、正直言って、
素晴らしかった。
要するに、若いこれからの世代で、いろいろな困難に立ち向かって行こう、という話だった。

今日一日の中身の濃い混乱に、
広島の演劇部と、庵野さんが、解答を示してくれたのだと思う。
岡本太郎の「母の塔」も、
ぶっつりと切られて死んだ大樹から、新しい芽が出てくる様子を表している。
要するに、そういうことなのだ。
つくる。つくろう。
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by syun__kan | 2016-08-01 23:59 | 日記 | Comments(0)
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現代芸術家、関口光太郎の日記。
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