広島滞在制作・最終日・完成
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6時半起床。
荷物を整理する…
そう、今日は最終日である。
美術館での制作が終わったら、その足で帰らなくてはならない。
鼻が若干つんとする。

初日にも食べた「なか卯」に、原点に返るつもりで行き、納豆定食を食べ、
スーツケースもろともレンタル電気自転車に積み込み、
美術館に乗り込む。
8時。

お借りしていたタッパーなどを、流しで洗う。
美術館の方には、炊飯器やおかずなど、たくさん提供していただいた。
立て替えていただいていた、仕出し弁当代やデリバリーのお好み焼き代(そう、広島にはデリバリーのお好み焼きがあるのだ。しかもうまい)を、
紙に包んで用意する。
そのために、なか卯でたくさん小銭を崩してきた。

スタジオに行き、
参加者様たちが残した作品を、内部構造の壁に取り付けまくる。
本当にたくさんの方々に参加していただいた。
その後は、正面入り口のトンネルの壁を整備する。
この三日間、学芸員の山下さんと、補助の米倉さんに、付きっ切りで手伝っていただいている。
10時に開館し、
11時くらいには、あらかた内部構造は出来上がった。

外側に出て、お客さんたちと話しながら、
不足しているパーツを作る。
わしの顔は、ニヤつきが取れない。
内部構造ができたことで、ほぼ勝ちは見えたのだ。
この作品が「完成しない」ということが、ありえなくなった。

7月16日のWSに参加してくださり、
城の左の方、「海」という文字の旗が立つ塔を、作るチームだった女の子が、来てくれていた。
「こんな風になったのかー!」というリアクションをしていて、
妹?友達?に、「私がこの塔を作ったの」という話をしていた。
城の出来上がりを、楽しみにしてくれていたのだ。
ならば、ぜひ、
「中に入る」ということもしてもらいたい。
学芸員さんにお願いし、13時から、
中に入って良いことにしてもらった。

13時になって、
ガムテープを手でちぎるという非常に簡易的なテープカットをして、
開通式を行った。
「注意事項が3つあります。
1つ目、中は狭いので走らないでください。
2つ目、壁には、友達の作品が付いているので、壁を触らないでください。
3つ目、中には、楽しい仕掛けとかは何もないです。
入って、出るだけです。
それだけです。
そのことについて、クレームを入れないでください」
という話をしたのち、
待ち構えていた数人の子どもたちが、中に入り、
中を観察して、尻尾から出た。
入って出ただけなのに、
「楽しい」「けっこうすごい」
というリアクションを聞き、
さすがにわしも…
ウルッときた。
苦労して、真剣に作った構造体が、機能しているという喜びだ。
嬉し泣きなんて人生で何度もあるもんじゃない。
金メダルを獲ったオリンピック選手は、嬉し泣きをしたりしなかったりするが、
それと同等くらいの喜びが、わしにも去来したということだ。
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気に入ってくれた子どもたちは、
回遊魚の様に延々と出たり入ったりした。
わしは、中の部屋に安置する、人魚の王様を作り、
設置した。
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お客さんの中には、
野菜ジュースを差し入れてくださった方など、
2度目、3度目のリピーターの方もいて、
とても嬉しかった。
お家で自主的にガムテープ工作を始められた子もいたりして、
広島の子どもたちに、ささやかな、良い(と言って良いかはわかならいけど、何らかの)影響を与えられたんだなという気がした。
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閉館し、
簡単に撮影し、微調整し、片付けし、
学芸員さんからお土産をいただき、
わしの滞在制作は終わった。
市電に乗り、
駅でもみじ饅頭をやみくもに買い込み、
今は新幹線の帰路。

今回の企画は、「異界」がテーマであり、
子どもたちがある程度常時体験できるような展示、WS、
2か月弱。
という内容でお話をいただいた。
その後決まった企画タイトルは、「あちらの世界?こちらの世界??」だった。

このテーマ及びタイトルには、非常に頭を悩まされた。
わしにとっては超難題だった…
ある意味わしの作るものは大体いつも、日常と乖離した異界であり、
学芸員さんのイメージする異界とは何ぞや?
ということを、数か月考え続けた気がする。
結局のところ、「人魚姫の物語の世界が異界」みたいな感じで、
どうにか案を着地させ、準備を開始したが、
正直言って、あちらの世界とはなんぞや?こちらの世界とはなんぞや??ということについて、
完ぺきに腑に落ちる答えを持てないまま、
滞在制作もスタートさせた気がする。

しかしながら、広島の街を回って分かった。
この街は、原爆の痕跡があまりにも多い。
物理的な痕跡だけでなく、71年たった今でも、人々の心に大きな影響を残し続けている。
ヒントだったのが、イサムノグチのデザインによる平和大橋、西平和大橋。
「ゆく(しぬ)」「つくる(いきる)」をテーマにしたこの橋に見られるように、
やはりこの地では、
原爆というあまりに大きな「死」「不条理」「過去」に対し、
どういうアンサーをするか、どういう未来を見せるか、
それが問われている気がした。

「あちらの世界」は「死」であり、「過去」であり、
「こちらの世界」は「生」であり、「未来」なのだ。

まあ、行く前からそれは薄々気付いてはいたのかもしれない、
人魚姫の城の骨組みは、魚の骨をイメージして作った。
「死」のイメージである骨を、わしや参加者が肉付けしていくことで、生き返らせる。
これが、大人魚姫の城作りの、裏テーマだった。
東日本大震災の時も、近いことを思った。
新しいものを作る、どんどん作るという姿を、
教員でありアーティストであるわしが、率先して見せなければならない。
広島市街の観光を経て、わしの中で、裏テーマはメインテーマに格上げされた。

しかし、わしが一生懸命肉付けした城でさえ、
参加者が作ったカラフルな作品が周りで泳ぐと、
わしの作ったベージュの部分が遺跡のように見えたりして、それはそれで面白かった。
生命力という点で、子どもたちのワークスはわしの上を行っていた。

もう一点、今回の滞在制作は、
わしの作品世界と、一般のお客さんの作品世界の融合という部分でも、
「あちらの世界?こちらの世界??」だった。
「大人魚姫のお城」は、わしのキャリアに正統に加わるべき代表作であるが、
しかしお客さんたちの作った様々なもの、
ギュッと捻ってペッと貼っただけの、ミニマリズムな作品も、
ぜんぶ一体化している。
老若男女、さらに広島という土地柄、
外国の方にも多数参加いただいた。アジア、欧米。
こういうのは初めてだった。
他者受容、相互理解というやつだ。
大人になったから、
教員として10年過ごしたり、自分が子どもを持ったりしたから、
できたことだと思う。
というか、この規模なら12日間で作れるという見立てをして、骨を組み、
一日10~12時間作り、休館日はちゃんと休み、
まさに最終日の時間内ギリギリに仕上げて帰れるというのも、
今までの経験値があるからだ。
(たくさんお手伝いをしていただいたけど…
というか山下さんと米倉さんのヘルプがなかったらできてなかったかも…
そこはご愛敬)

さあ、これで2016年の、
わしのアーティスト活動は終わった。
そう、もう終わりだ。
ワークショップとかはやるけど、
作家としての履歴を更新することは今年はたぶんもうない。
ライバルたちよ。
そこの二人。
三宅感、戸坂明日香よ。
君たちは昨年末から今年初めにかけて、
様々な勲を伝えてくれた。
Eテレの番組に出たり、岡本太郎賞を獲ったりと。
ご活躍の様子。
今現在は何をしているのか?
詳しくは知らない。
わしの滞在制作の日記を読んでいたか?
「大人魚姫のお城」は、君たちへのアンサーでもある。
残暑見舞いである。
この作品が例えば、三宅君の受賞作「青空があるでしょう」を超えるものだとは思わない。
でも、わしなりの、今までのいろいろな経験を詰め込んだ、精一杯のサムシングです。
成果が出たときだけ報告するのが、ずるいということはわかっている。
人生の3%輝くために、残りの97%、暗く深い所に潜るのが、アーティストである。
それぞれに、わしの想像もつかない経験を重ねているであろう、
君たちの、次なる報告を期待して待っています。
予備校の時のデッサンの講評で、
君たちより上の順位を取れるのは、「フォーンのトルソ」を描く時だけだった。
マルスもヘルメスもブルータスも、
だいたい君たちの方が上手かった。
あのうらみ?は忘れんぞよ。
君たちがレースから降りることを、わしは許さん。
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by syun__kan | 2016-08-11 23:59 | 日記 | Comments(9)
Commented by サナマンマ at 2016-08-12 06:40 x
6日の朝1番に子供たちを連れて行き、2回目は9日の夕方子供たちを連れて行きました。子供たちは楽しかったようで自宅でもガサガサと工作しています。
昨日で帰られることを子供たちに言うと「え〜っ!?」とショックを受けていました。解体のイベントのことを伝えたら「行く!!」と行く気マンマンです。
完成、お疲れ様でした(^-^)
Commented by syun__kan at 2016-08-12 18:07
ご参加、どうもありがとうございました!
9月11日も、お時間あればぜひお立ち寄りください!
関口光太郎
Commented by 野菜ジュース at 2016-08-14 00:33 x
あの日、帰宅した息子(6歳)は、
帰るなり教本(サイン付き)を広げ、
帰宅してきた父と、まずゴジラを夢中で作りました。
ふと見ると、くちびるにガムテープをぴろーんと
垂らしながら制作しているではありませんか!
衝撃的な光景に二度見してしまいました。

そして次はスカイツリーを作る!と意気込んだものの
6歳児なのでうまく段ボールが切れません。
なんと彼は、悔しくて泣きだしました。
ものすごく作りたいのに、作れなくて、
悔しくて泣いているのです。
そんな息子を見るのは初めてでした。

私も子どもたちも、先生とあの世界に魅了され
夢心地の時間を過ごしました。
素敵な夏をありがとうございました。
Commented by syun__kan at 2016-08-14 22:33
野菜ジュース様
何度もいらしていただき、
またその都度、重要な差し入れをいただきまして、
大変ありがとうございました。

ゴジラを作るのは素晴らしいですね。
教本がなくても工夫して作れるのは理想的です。
くちびるの荒れにはお気を付けください。

スカイツリー、大変ですみません。
あれは、一番大変です。
ジョーカー的な題材です。
今さら遅いですが、工夫して縮小版を作ることがおすすめです…。

関口も、広島の方々のおかげで素晴らしい時間を過ごすことができ、
感謝の気持ちでいっぱいです。

関口光太郎
Commented by ひとみ at 2016-08-20 14:31 x
息子の夏休みの宿題は一年生のときはティラノザウルスで、二年生で、飛行機 三年生の今は、スカイツリーをやってます。
銀色の下地を貼り終えたところです。
質問ですが、網み目状の白のテープはどうして貼るのが一番適当でしょうか。

息子は自分の身長と同じだと喜んでますが、
親はどうやって学校へ持っていくのだろう?
と心配してます😓
Commented by syun__kan at 2016-08-20 21:07
ひとみ様

関口の本を3年間も活用していただき、感激です。
ありがとうございます。
スカイツリーを作っているとのこと、すごいですね…
今、本が手元になくて記憶が頼りの回答になってしまいますが、
網目状の白テープは、
5ミリほどに細く裂いて、ひたすら地道に貼っていく、
非常に根性の要る作業になります。
タテ・ヨコ・ナナメに貼っていきますが、
順番は、タテヨコどちらから始めても良いです。
タテヨコを貼り終えたらナナメにとりかかるんだったと記憶しています。
実を言うと、関口も、
あまりに細かくて大変だったため、
本に載っている写真の、裏面は、
白テープを貼っていません(謝)
大人でも大変なほど、根性が要るということになります。
本に載っている作品では、ほぼ実物のスカイツリー通りの細かさで窓を表現していましたが、
まだ3年生ですから、
白テープのラインを多少減らして、
若干簡略化して表現するのも良いかと思います。
5ミリ幅で裂くのも、長くまっすぐに貼るのも、
3年生の手だとけっこう大変ですよね。
コンディション次第で調節のアドバイスしたり、
手伝っていただけると幸いです。
お手数をおかけしますが、よろしくお願いします。

作品の搬入については…
関口も4年生の夏休みのとき、1メートルくらいあるケラトサウルスを作ってしまい、
たしか…持っていくために親に車を出してもらいました。
持ち帰るときは、自分でおんぶして帰りました。
途中で犬に吠えられた記憶があります。

関口光太郎
Commented by ともせな at 2016-08-24 13:15 x
「海」の塔の女子の母です。
私はひそかに先生のブログで過程を見ていましたが
当日行くまで娘には内緒にしていたので、なかなかのリアクションでした。
娘がドヤ感で説明していたのは双子の妹たちです。
先生の服がガムテープだよ、と教えると、しばらくしてから
いかにも知ってる風に「せんせいのおようふく、テープなんよ!」と教えてくれました。
双子のひとりは大人魚姫に恐れをなしていました。

出来上がりを見ると、しげしげと見る場所がたくさんあり、
椅子でもあったら座ってかなりの時間眺めていられそうな作品ですね。
公開最終日に解体するのが非常に惜しい気がしますが、
またみんなで参加する予定です。

質問があります。
先生がお使いのカラー布テープについてです。
メーカーでテープの色(ピンクがあるとか紫があるとか)が違うので、
各社での違い(テープの切れ味とか)があれば教えてください。
本を買った(サインいただきました)ので(寿司のほう)
いろいろ作ってみたいと思っています。
Commented by syun__kan at 2016-08-24 22:16
ともせな様

ご来場ありがとうございました!
娘様たちも本当にありがとうございました!
本もお買い上げいただき、ありがとうございます!
9月11日も時間があればぜひおいでください。

カラーテープのメーカーによる違いですが、
全部関口の主観ですが、
ニチバンは、デニム地みたいに厚くてしっかりしています。
あと、繊維がタテヨコでなく斜めに走ってるのが特徴です(使い心地にあまり影響はありません)。
色が明るくキッパリしています。

オカモトも使いやすいです。
ニチバンとオカモトで補い合えばだいたい必要な色がそろいます。
日東電工のカラー布テープも高品質ですが、
やや透けます。
黄色がややオレンジ寄りで緑が暗めです。

ここまで挙げたメーカーは、関口がワークショップする際に使っているもので、
「手切れ」と「粘着力」に優れています。
その分、やや高級というか割と高価です。

それ以外では、
セキスイや寺岡製作所も使ったことがあります。
その他、関口の知らない、良いメーカーもあるのだと思います。
また、普段の遊び用レベルでしたら、もっと安価なものでも充分だと思いますし、
仕上げに表面にボンドを塗れば耐久性も問題ないと思います。
よろしくお願いします!

関口光太郎
Commented by ともせな at 2016-09-09 17:06 x
返信ありがとうございます。
いろいろお使いなだけあって、参考になりました。

家でのままごと用品作成など、気軽に使う予定ですので
色の好みなどと相談して買ってみたいと思います。

9月11日、別件のワークショップもあるので美術館には行く予定です。人魚姫解体も寄りたいです。
最終日解体前の姿を収めておかねばです。
<< 揺れない 広島滞在制作・11日目・ハードワーク >>



現代芸術家、関口光太郎の日記。
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