奥さん観ず

以前は、やたらめったら、自分の好きな物を人に勧めていたが、
あれは恥点だった。
周りからしたら、はた迷惑な話だったろう。

しかしながら、近しい人と好きな物を共有することの素晴らしさは、
そういうリスクを超えても手にしたい、
と思う気持ちもわかる。

今はわしは、何かを人に勧めることはほとんどしない。
それぞれには、それぞれの考えがあるものさ。
世の中の大小のトラブルの多くは、考えの押し付けから発生する。

ただ、ただ、奥さんにシン・ゴジラは観てほしい。

スーパー戦隊や仮面ライダーやウルトラマンが毎年、何らかの新作を発表する中、
わしにとって造形の師匠的存在である日本のゴジラは、10年以上、沈黙してしまっていた。

ところが今年、「シン・ゴジラ」が公開され、
先立って、ペットボトルキャップやガチャガチャにて、
ゴジラの玩具が散見されるようになった。
街で見かけるちっこいゴジラ、キングギドラ、メカゴジラ…
これがまず、嬉しかった。
子どものころのわしは、とにかく、ゴジラのこまごまとした玩具をチェケラするのが、生活の一部だった。

そして8月初め、広島滞在中に鑑賞した「シン・ゴジラ」は、
掛け値なしに素晴らしい作品で、
またその後、日本全国においてゴジラが、
この夏の文化的な大きな話題の一つとなるという、
長年のファンからするとちょっと信じられないというか、
夢のような状況。

そして多分この作品、
世の中を斜に構えて捉えることにかけては筋金入りの、
わしの周辺でおそらくもっとも辛口なコメンテーター、
うちの奥さんのお眼鏡にもかなう。
最も身近なはずの人物と、この映画について語り合えたら、どんなに楽しいか。

「明日雨だね。ボリさん預かるから行ってきていいよ」

「君、エヴァ世代でしょ。
わしは全然エヴァンゲリオン見たことないけどさ、
シン・ゴジラの監督はエヴァの監督の庵野さんだよ」

「この夏の話題作だよ。
君は時代の最先端を追いかけることがモットーでしょ。
チェックしておいた方がいいと思うけどな」

「君、大杉蓮さん好きだって前言ってなかったっけ?
シン・ゴジラ、大杉蓮さんめっちゃ出てるよ。
たぶんゴジラより出てるよ」

「ゴジラっていうのはさ、
でかい画面で見る必然性があるよね。
人の顔が大写しになってもさ、肌荒れとかが目に入るだけだけど、
ゴジラってでかくてなんぼだからね」

「制作費数十億らしいよ」

「エヴァンゲリオンの音楽が一部使われてるよ」

「竹野内豊、好きでしょ?けっこう出てるよ」

様々な方向から、揺さぶりをかけたが、
しかし奥さんは、それら全てに何らかの回答を示し、観に行かなかった。
とりわけ、

「私は妊娠中から、もう4年間くらい、
映画館で映画なんて観てないよ。
久々に行くのに、なんで興味無いものを観なければならないのだ!」

というアンサーは強かった。
その、揺るがなさは、
自衛隊のどんな攻撃もほとんど効果なかった、ゴジラの姿を彷彿とさせ、
むしろ奥さんがゴジラなんじゃないかと錯覚した。
奥・ゴジラなんじゃないかと。

でもわしは、一連のやり取りの中で、
一瞬、奥さんが揺らいだのを見逃していない。
まだ決着はついていないと信じている。
電車爆弾か、お酒好きな奥さんにはヤシオリ作戦が有効だろうか?
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by syun__kan | 2016-09-04 23:44 | 日記 | Comments(0)
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