新聞紙×ガムテープアート

f0177496_052182.jpg

概要

新聞紙を丸め、ガムテープ(布粘着テープ)を貼ることで形を作り出していく造形技法。造形作家・関口光太郎が技法を確立し、活動を行っており、現代美術表現、および子ども向けの工作の手法として徐々に広まっている。


技法の確立

関口が小学校3年生の夏休み(1992年)、夏休みの工作の宿題に何を作ろうか迷っていた際、両親から新聞紙とガムテープを使って立体作品を作る技法を教えられる。関口はこの技法でステゴサウルスを作った。なお、新聞紙とガムテープで形を作った後、千切った障子紙を表面に貼って覆い、乾いたのちに水彩絵の具で着彩する「紙張子」に似た技法で仕上げた。翌年には同技法で1メートル大のケラトサウルスを制作し、提出。

その後、高校時代に美術部の活動において、同技法で「ジャイアント馬場」を制作するなどはあったが、継続して取り組むことは無く、関口は多摩美術大学美術学部彫刻学科に入学。そこで木彫、石彫、鉄、型取りなど様々な素材による立体制作を学ぶが、どれも素材が高価で、大掛かりな道具や設備が必要になることに不満を持ち、「もっと気軽に、思いついたものをいろいろ作りたい」との考えから、子どもの頃に取り組んだ新聞紙とガムテープによる立体制作を思い出し、再び取り組み始める。初めは小学生の頃と同様、障子紙を貼って着彩し、仕上げていたが、卒業制作となった縦横6メートルを超える『瞬間寺院』では、新聞紙とガムテープを露出させたまま完成とし、提出した(2006年)。

この頃には、人の顔やハサミ等の人工物まで、あらゆるモチーフをリアルに再現できるようになっており、新聞紙+ガムテープが現代美術で通用する造形技法として確立したと言える。

関口は卒業後、教職を志して特別支援学校の教員となり、アート活動を止めていたが、雑誌「アルネ」に掲載されていた卒業制作の写真が世界的デザイナー・三宅一生氏の目に留まり、同氏の手がける21_21Design Sightでの企画展「21世紀人」に向けて作品を制作・展示するよう依頼される。そこで関口は高さ7メートルを超える『明るい夜に出発だ』を制作し、出品(2008年)。この技法が現代美術表現として広く紹介される最初の機会となる。

その後、同技法を自らの「天命」と位置付けた関口は、第15回岡本太郎現代芸術賞を受賞した『感性ネジ』(2012年)をはじめ、大小さまざまな作品を発表している。平成27年度には、日本文教出版の5、6年向けの図工と高校美術3の教科書において作品が掲載される。


ワークショップにおける展開

開発者である関口が教員でもあったことで、同技法は主に子ども向けの工作アイデアとしての可能性を探ることになる。

2008年の「21世紀人」において関口はワークショップの実施を依頼され、同技法は一般者には難しいと考え実施を難渋していたが、後に妻となる秦希望氏に「いや、たぶん意外とできるよ」と助言され、同技法による自由制作のワークショップを実施。すると参加者は、子どもから大人まで楽しそうに様々な作品を自由に作り出しており、関口はワークショップ向けの造形アイデアとしての可能性を感じる。

その後、地元に近い高崎で実施したワークショップで、カラーガムテープを取り入れたところ、参加者の発想が広がったことから、カラーガムテープを取り入れるようになる。

実施形式としては、自由制作、テーマを持たせた制作、新聞紙の海で遊ぶ、高さを競う、協力して大きな作品を作る、関口の作品に参加者の作品を加えていくなど、様々な展開のバリエーションが生まれた。これまで様々な美術館、商業施設、学校等で実施。図工・美術教員向けの研修として実施することもある。実施した都道府県は、北海道、秋田、群馬、千葉、東京、神奈川、長野、愛知、大阪、広島、愛媛。

ガムテープを切るのは一定の手の力が必要になり、個人差はあるが概ね小学校1年生頃から一人で扱えるようになる。したがってワークショップを実施する際は、未就学児は保護者同伴としている。


工作本の出版

千葉県船橋市アンデルセン公園こども美術館にて展示していた参加者の作品を、講談社の編集者が目にしたことがきっかけとなり、子ども向けの工作本を作る話が持ち上がる。関口は子どもの造形活動について「手を動かしながら作りたいものを思いつき、試行錯誤したり途中変更を加えながらそれぞれがぞれぞれの完成形にたどり着けばいい」という考えを持っており、作り方のマニュアルを提示することに抵抗があったが、「実際に関口が対面してコツを伝えられる機会は限られている。広くこの技法の楽しさを伝えるためには、最初のとっかかりとしてマニュアルがあってもいい」と思い直し、2015年に『新聞紙とガムテープでこんなのつくれた!親子で自由研究』が出版される。同書籍は、この年の夏休みに日本テレビ『スッキリ!!』に関口が出演して紹介したことで、アマゾンの全書籍のランキングで一時的に50位に上昇。翌年には続編となる『新聞紙とガムテープでつくって遊ぼう!親子で自由工作』を出版。

インターネット上で作り方を紹介する機会もあり、日東電工「テープミュージアム」(第9回)(第4回)ソニー「KIDSTONE」のサイトで、写真や動画で作り方を観ることができる。


造形技法的特徴

木彫や石彫が、素材を削るという「マイナス」の操作で行われ、塑像は粘土を「足したり引いたり」という操作で形を作っていくのに対し、新聞紙&ガムテープによる立体制作は、塊を「絞る」という操作で形を作っていくという点に独自性がある。すなわち、新聞紙をグシャグシャと丸めた塊に対し、テープをきつく巻けば形が締まり、凹みやくびれ、張りを表現でき、ゆるく巻けばゆったりとした柔らかさを表現できる。これらの操作の繰り返しにより、動物などの有機的な形を表現できる。また、ビルディングなどの箱状の形を作る際は、平らな面に合わせてテープを貼り、縁を境目にして貼り分けることで幾何学的な形を強調できる。

なお、完成後しばらく経つとテープが剥がれてきてしまう場合があるので、長期保存する場合は表面に木工ボンドを塗ることを推奨している。耐水性が必要だったり、特に綺麗に仕上げたい場合はアクリル画用の透明メディウムを塗っている。


使用ガムテープ

紙製のいわゆる「クラフトテープ」ではなく、布粘着テープを使用する。

関口は大学時代に取り組む中で、ホームセンターや100円ショップの格安の物まで含め、様々なガムテープを使っていたが、メーカーによる品質の違いに気づき、同技法に最適なガムテープとして「日東電工スーパー布テープ」を発見。以後は必ずこのテープを使用している。5メートル以上の大型作品の場合、テープは200~300巻必要になり、これまで購入した同商品は数千巻に上る。

ワークショップで使用するカラー布ガムテープは、日東電工の他、ニチバン、オカモト等様々なメーカーの商品を取り寄せ、なるべく多くの色数を揃えている。
[PR]
by syun__kan | 2016-09-17 23:45 | 新聞紙×ガムテープアートとは? | Comments(0)
<< 聖火 「大人魚姫の城」 >>