プロレスデビュー・詳細
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小さいころから、プロレスラーに憧れていた。
プロレス中継を心待ちにし、暇があればプロレスの妄想をし続けていた。
しかし、本気でプロレスラーになりたいと思ったことは、実はない。

幼心に、わかっていたのだ。
わしの腕が、あんなに太くなるわけない。
あんなアクロバティックな動きを、できるわけない。
蝶野にSTFをかけられて、ロープまで這って逃げれる自信がない。
どうすればビッグバン・ベイダーに勝てるか、方策が何も思いつかない。

だからわしは、無謀なチャレンジを起こすことなく、
大人しく鑑賞者でありつづけた。
そして少年はおじさんになり。

そんな中、知人を通じて舞い込んだ、みちのくプロレス様からのご依頼。

「東京タワーを作ってほしい」

みちのくプロレスといえば、ザ・グレート・サスケ選手が1992年に旗揚げした、歴史ある超有名団体。
東京タワーが出動要請されているのは、みちプロ年末恒例の、
何でもありの強烈なスペクタクルが繰り広げられる、「宇宙大戦争」という大会。
わしも過去に、何度も観に行っている。

こんな機会はない。
二つ返事でオーケーし、制作に取り掛かった…
要したのは約三日間。
「宇宙大戦争」に足を踏み入れれば、作品は必ずぶっ壊れるに違いない。
ぶっ壊れるのが確定しているものを、三日間、全力で作る。
もったいない?とんでもない!
プロレスラーは、何年もの弛まぬ練習の末、命がけでリングに上がっている。
三日間の苦労なんて、なんでもない。
三日間の苦労で、あの憧れのリングに、上がれるのだ!
作品が、わしに成り代わって!

試合前日、制作場所である練馬区の秘密基地に、
先方がピックアップに来てくださった。
お忙しい中、ご足労いただき申し訳ない。
来てくださったのは、何度も試合を拝見している、欠場中の選手で、わしは早くも舞い上がった。

当日、12月15日(木)。
わしは終業後、後楽園へ。
三宅感君と戸坂明日香さんを誘った。
二人は親友だが同時にライバルなので、ここぞという時にしか会わないが、
今日はここぞ感がある。

格闘技の聖地・後楽園ホールに、観衆は1850人の超満員札止め。
アンダーカードも素晴らしかったが、
いよいよ6試合目、メインイベント。

公式記録を引用すると、

▼宇宙大戦争11~FAKE~誰にも言わないで下さい。衝撃のメンイベント。好きな人と観に来てほしい。これは、ふたりの物語。
○ザ・グレート・サスケ/バラモンシュウ/バラモンケイ/ウルトラマンロビン/モスラ(ミニマスター)
36分31秒 ダークナイト・ライジング→体固め
キラー・クロックGAINA/ハーレイ・クイン2号/デッド・ショット1号/グンジ/●シン・ミニラ(のはしたろう)


とのことで、たぶんプロレス未見の方はさっぱり意味不明だと思うが、
要するに、5対5のタッグマッチであり、
各選手がそれまでの流れを受けて様々なキャラクターに様変わりし、
筆舌に尽くしがたいカオスな激闘を繰り広げた。

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東京タワーは、シン・ミニラと共に入場し、
試合開始後しばらく、場外に安置されていた。
このまま最後までほっとかれたらどうしようと、わしは不安だった。

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試合中盤、ついにリング内へ。
高鳴る鼓動。

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ミニマスター選手が変身した「モスラ」が、そこに繭を作り、成虫に羽化した。
東宝特撮映画ファンでもあるわしは、原作に忠実な展開に感動した。
シン・ミニラがキングコングの様に人形をもってタワーにのぼり、
モスラがアタックして落とすという、怪獣映画さながらの展開は、
そのセンスに脱帽した。
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ウルトラマンロビン選手のフライング・ボディアタックは、シン・ミニラにかわされ、
東京タワーを直撃し、
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それでも壊れなかったタワーは、武器となって様々な選手に振り回され、
最終的にハーレイ・クイン2号選手のヒップドロップを浴びて見事に真っ二つに折れ、
リング下に落ちて行った。
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タワーがリング上にあった時間は、ものの5分くらいだったか?
興奮していてわからないが、
ただただ夢心地だった。
わしは貧弱なため、ボディアタックもヒップドロップも受けられない。
ケガして保健室である。
代わりに、わしの作品が、プロレスラーの本物の技を受け止めてくれたのである。
夢が叶った状態に近い。

タワーが折れた瞬間、後楽園ホールは「あー!!」という歓声に包まれた。
それはこのタワーが、一定のクオリティの高さで作られていたからだろう。
ショボかったら、壊れても何の感慨も起こさない。
一生懸命作った結果が、後楽園の歓声の一助になったのだから、
この上ない喜びだ。

しかしながらその後、くだんのザ・グレート・サスケ選手が、東京タワーのことなど誰もが忘れるような、
想像を絶する技?アクション?を展開し、
後楽園ホールは大熱狂空間と化し、
30分を超える試合は終わった。

終了直後の客席で、わしをみちのくプロレスに紹介してくださった方が、
「みちのくの人と挨拶していきませんか?」
と声をかけてくださった。
わしは一瞬迷ったが、断った。
プロレスのバックステージは、わしにとって聖域である。
今回、ちょっと踏み込んだ形になったが、
何となく、あくまで鑑賞者としての幸せな距離を持ち続けたいと思ってしまった。
プロレスを鑑賞する幸せは絶妙なバランスの上に成り立っている。

ボロボロになった東京タワーはおそらく可燃物として処理されるが、
元々わしの新聞紙とガムテープによる造形活動は、瞬間の美しさを求めるものであった。
最近は5年くらいは残そうと、倉庫に作品をしまったりしているが、
完成品と過ごした期間がほんの一瞬だった今回の件は、
初心を思い出す機会にもなった。
本当に、ありがとうございました。

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by syun__kan | 2016-12-17 21:59 | 作品写真 | Comments(0)
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現代芸術家、関口光太郎の日記。
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