バラゴンの定理
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サンダーストーム・チャイルドを、アーツ前橋に搬入・設置してきた。
毎回補修したり付け足したりしているので、徐々に密度が増している。

この作品の着想は2012年。岡本太郎賞受賞後、副賞的に、
青山の岡本太郎記念館で展示できることになったわしは、下見に行った。
その時に開催されていたのが、ヤノベケンジさんの展示で、
庭には、放射能防護服を着て、しかしヘルメットを外して脇に抱え、太陽を浴びて微笑んでいる子どもの、巨大な像が。
タイトルは「サン・チャイルド」とのこと。
時は東日本大震災の翌年、日本中が放射能の恐怖におびえる中、
そのような恐怖の無い未来を願うような、明るい作品だった。

しかしわしは、まだそんなに前向きな気持ちになれないよ!というのが正直なところだった。
希望を表現するような「感性ネジ」という作品で太郎賞を獲ってはいたが、
自分の将来への不安、子どもたちの未来への不安というのも同時に心に存在してはいて、
そのへんグジャグジャな感じだった。

なので、希望を表現するのが「感性ネジ」なら、
「でも不安だよ、ちくしょう!」という気持ちを表現する作品として、
「サンダーストーム・チャイルド」という発想が出てきた。
サンダーストームは、雷雨の嵐である。
新聞紙とガムテープという弱い素材でできた子どもの像を、記念館の庭に展示して、
風雨にさらそうと思った。

しかしながら、この案は「ほんとに崩れて風で飛んで行ったら大変」等の事情で変化し、
結果的に「ヒーロー」という、天井から吊るす作品となった。
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まあ、天井から落ちて来ても大変なわけだが、
そのへんは太郎の名がついた施設の、めちゃくちゃなことを許容する精神を感じた。
「ヒーロー」は翌2013年1月、銀座の「ELTOB TEP ISSEY MIYAKE」でも展示された。

その年の3月、21_21DESIGN SIGHTでの「デザインあ」展と六本木アートナイトに合わせた、
巨大な「あ」の字の作品を依頼されたわしは、
制作が日数的に間に合わないことへの解決策として、
「あ」の、上の横棒部分に「ヒーロー」を使った。
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この作品は、期せずして最初のコンセプト通り、3週間、六本木の中心で野ざらしにされ、
ボロボロになったのである。

その後多摩美の彫刻棟ギャラリーでの展示を依頼されたわしは、
「あ」は、業者さんが作ってくれた、台の中から中心の縦棒に伸びる鉄骨の構造がないと自立できないので、
「あ」をバラして、片膝を立てて座っている青少年の形に再構成した。
これに、最初の着想だった「サンダーストーム・チャイルド」のタイトルを与えたのである。
この時は個展で、自分のこれまでの歩みを振り返る機会だったので、
「放射能への不安」に加え、雷の多い地域である群馬県で生まれ育った自分の姿も反映させたネーミングだった。
この年、「サンダーストーム・チャイルド」は多摩美に加え川崎の岡本太郎美術館、船橋市のアンデルセン公園こども美術館に展示され、
2015年には調布の「たづくり」という施設のギャラリーで展示された。

要するに、最初に作った「ヒーロー」を、これでもかと使い回しているのである。
お前はリサイクル業者か。という声を真摯に受けよう。
我が身を5分反省し、
そしてベランダに立って胸を張り、アンサーをしよう。

この度重なる使い回しを支える理論として、わしが提唱しているのは、「バラゴンの定理」である。
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「バラゴン」は、東宝の「フランケンシュタイン対地底怪獣」(昭和40年)という映画で生まれた、
四つ足の怪獣である。
この着ぐるみは、わしの記憶が正しければ、
円谷プロのテレビ番組「ウルトラQ」において、
首を挿げ替えて「パゴス」という怪獣に改造され、登場している。
週1のテレビ番組であった「ウルトラシリーズ」は、案の定制作が非常にタイトであったため、
東宝から使用済みの怪獣の着ぐるみを借りて(もらって?)、改変して使っていたのである。
そして「パゴス」のあと、さらに、「ウルトラマン」において、
初期のわりと重要な怪獣である「ネロンガ」に改造される。
その後、同ウルトラマンにおいて、トゲがいっぱい付いて「マグラ」という怪獣になったはずである。
さらにその後、エリ飾りが付いて「ガボラ」になったはずである。
そして最後は、東宝に戻り、
なんとまた「バラゴン」となって、ゴジラ映画に出演を果たしている。

着ぐるみ内部は相当に臭かったはずだ。
しかし論点はそこではなく、
改変を辿ったどのキャラクターも、魅力的な名怪獣として現在まで語り継がれている点だ!
パゴス以外。
そう、正直パゴスはあんまりもうフィギアとか発売されてない気がする。
しかし、バラゴンはもちろんネロンガもマグラもガボラも、素晴らしい造形作品だと思う。
使い回しだからと言って、ダメな作品とは限らないのである。

これが「バラゴンの定理」だ。
よろしく。

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by syun__kan | 2017-01-23 07:41 | 日記 | Comments(0)
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現代芸術家、関口光太郎の日記。
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