わしの職場の学校の生徒たちは、電車が好きである。
鉄道ファン率は、おそらく過半数になるのではないか。
確かに、鉄道資源に恵まれた立地の学校ではある。
練馬区東大泉に位置し、
北に西武池袋線、南に西武新宿線に挟まれ、
副都心線も直通してるし、
足をのばせば武蔵野線もあるし、練馬からは大江戸線も出ているし、
20分ほど乗って山手線駅の池袋に着いてしまえば、
そこから先は日本一の鉄道網がびっしりと広がっている。
わしの故郷の群馬には、こんなに鉄道は無かった。
わしの実家から最寄り駅の前橋までは、徒歩45分くらいであり、
移動は基本的に自動車と自転車に委ねられている。
でも、一部の都会以外の、日本の大部分はこのような田舎であるはずで、
こうした鉄道資源の少ない田舎に住む特別支援学校の子どもたちは、
一体何を嗜好しているのだろう、
と気になってしまうくらい、
職場の子どもたちは電車が好きだ。
先日は終業後、作品の設置作業のため、
大泉学園から池袋線に乗り、
表参道に向かった。
石神井公園でFライナーに乗り換える。
ピンクと赤のラインで、東急4000系だ。
そういった車種とかに関して、以前はこれっぽっちも興味なかったが、
職場では頻出する話題なので、
わしも基礎的な知識は付いてしまった。
いつか黄色い西武2000系の車両がラストランになるときは、
はっきり言って、わしもお別れに見に行きたいかも知れない。
西武線沿線は西武グループが強いようで、スーパーマーケットでは西友がよくある。
西友には「やっぱコスパ」というポスターが掲げられている通り、
電車に乗って来る人も、コスパと実用性重視の格好をしている気がする。
しかしFライナーが、東京の地下を走り、東京深くに食い込んでくると、
徐々にファッションも、それっぽくなってくる。
髪型も、切りそろえたり、刈り上げたり、撫でつけたりがとてもキッパリとした調子で行われるようになり、
服装も、ズボンの裾が短かったり、
カラフルな人はどこまでもカラフルに、レザーな人はどこまでもレザーに、
細い人は細く、ふわっと着る人はふわっと、
それぞれに顕著になる。
それが実用的かは分からないが、例えばメガネまで丸かったりでいちいち特徴的だ。
その傾向は、明治神宮前(原宿)から表参道あたりで最高潮になる。
表参道A5の出口を出て通りを歩くと、
それぞれ何かしらの主張が発せられている老若男女が歩く、
高級ブランドが立ち並ぶストリート、
凹凸のあるガラス壁に囲まれたプラダの店内は、
そんな壁なので中がよく窺えないが、
おそらく「やっぱコスパ」のポスターは貼ってない。
ショーウィンドウに映る、歩いている自分の格好を省みると、
職場から直行なので砂埃にまみれたジャージであり、
実用性に重きの置かれる池袋線沿線から来たから、では済まされない。
自分の責任である。
岡本太郎記念館に着くと、梱包されたわしの作品がある。
梱包を取り、展示室の中心に置き、
照明の角度を決める。
表参道とかでオシャレな格好をして過ごすのは非常に素敵なことだが、
少し離れた地域で、表参道とかに置ける作品をつくり、
時々置きに行くということも、
それもまた別のかっこよさがあるのではないかと考えている。