ブルックリン・前編

前に住んでいた部屋は、壊滅的だった。

もとより、わしはあまり整理整頓が得意ではない。
奥さんも、2年半くらい鬱で臥せっていた時期があった。
そこへきて、ミニチュア・ピンシャーというブレーキの壊れたような犬種を、去勢せずに飼育し、
途中で猫も加わり、
さらに人間の赤ちゃんも加入した。

散らかるとか散らからないとかの話ではなかった。
まだ小学生なのに、東大進学コースに入って大学受験対策の授業に「付いていけ」と言われるようなものだった。
要するに無理だったのである。
この条件で「キレイを保つ」みたいなことは。

引っ越す際に、夫婦で、
「キレイに住もう」
という誓いのようなものを立てた、
いや、改まって立てたわけではないけど、
それは希望であると同時に、「しなきゃね、うちらもやばいよね」というような、
苦笑い状の何かだった。
(そのくらい、引っ越しの際の始末は大変だった)

しかし、いろいろなグッズを無節操に一部屋に詰めたら、
それはやはり、悪い意味でのカオスになってしまう。
何か、新居のリビングについて、一つ方針というか、テーマを決めよう、
そのテーマに沿って、家具やインテリアを置こうという話になって、
奥さんに「どうする?何かテーマはない?」と聞いたところ、

「ブルックリン」

と答えが返ってきて、わしはとても驚いた。
何しろ、奥さんがそんな単語を口にしたのを聞いたことない。
聞いたことないのに、今後ずっと住む部屋のテーマにしようとしている。
ブルックリン、わしはそれがどこかも分からない。
正直言って国なのか州なのか市なのか何なのかさえ、さっぱらこっちゃわからない。
身近だと思っていた奥さんが、
急に遠のく。
未知の世界に旅立ってしまった。
どこそれ。なにそれ。
混乱。
後半へ続く。

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by syun__kan | 2017-06-03 10:03 | 日記 | Comments(0)
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