島根滞在制作前夜:ヤマタノオロチ考

島根県に向かう飛行機の中なり。

島根県浜田市、世界子ども美術館において、
滞在制作および展示を請け負うことになったのは、
昨年末だったか。

何を制作し、展示するかということについては、
例によってさんざん頭を悩ませた。

その土地柄や、自分の作品を置く部屋の広さ、
地面・壁・天井の材質、
美術館や展示自体の性格やコンセプト(どのような作品が期待されているかということ)、
そういった諸条件に、
制作日数を兼ね合わせる。
プラスして、それが自分が本当に作りたいものかどうか。
作りたいものでなければ、エネルギーが持たないかもしれない。
さらに言えば、2020年に何か大きなものを完成させたいと思っているわしは、
この夏に作った物も、部分的には、
2020年の作品に活かしたい(使い回したい)と思っている。
さらにさらに、
今回受け持つ展示室は、けっこう広く、
ひと夏の制作物では埋まらないだろう。
となると、既存のわしの作品と、
新規制作のものを組み合わせることになるので、
旧作との組み合わせし得るもの。

のような感じで、
「何を作るのか?」という答えを出すのは、
非常にこんがらがった数式を解く様な強烈な煩悶がある。
特に、美術館の性質上、お客さんは子ども中心であり、
若干体験型(乗れるとか、入れるとか、作れるとか)である方が良い、
という条件をクリアするのが大変(昨年の広島もそうだったが)。

足がかりになったのはやはり、島根県に出雲大社があるということ。
要するにそれはスサノオがクシナダ姫をかこむために作ったやしろであり、
島根県は古代の神話の存在感が濃い土地なのであった。
出雲は県の東部で、美術館のある浜田市は西部なので、
両者はけっこう遠いのだけど、
神話を扱う神楽などは浜田市でも親しまれていると、美術館の方はおっしゃっていたので、
それを信じる。

しかしながら全然、わしは古事記、日本書紀などの日本の神話について知識がなかった。
スサノオとか大国主の命とかも、
出雲大社のガイドブックを読んで初めて知ったことで、
わしは少しずつ、本を読むなどして知識を得た。
ちょうど同僚の結婚式が鶴岡八幡宮であったりして、
式から披露宴までの時間に、本殿横の無料休憩所でそれ系の本を読むのはなかなか風情があった。

様々に検討した結果、わしが絞り出した結論はヤマタノオロチだった。
もう、総合判断としか言いようがない。
10月の展示では、過去作品で、何度も何度も展示している「サンダーストーム・チャイルド」をまた引っ張り出し、
群馬から島根まで運んで、
それをスサノオノミコトに見立て、
夏に制作したヤマタノオロチと対決させよう、という寸法だ。

そこまで決めて、わしはある程度安心し、以後思考停止していたフシがある。
神話という文で語られるヤマタノオロチを、どのように可視化するか。
それは相当な難題であるということに気付いたのは、
滞在制作開始まであと一週間に迫ってからだった。

いや、薄々気付いてはいた。
しかしながら、学期末の学校の仕事のせわしなさ、体力の消耗等々にかまけて、
現実逃避していたのだろう。
考えなくては、と思ってはいたが、頭が回らなかった。
いやいや、もしかしたら、そういうときわしは、
わしの深層心理は、
「ギリギリに追い込まれた時のヒラメキに頼りなさい。今は考える必要はない」
と言っているのかもしれず、
でも本当にそんなヒラメキが起こるのか、信用できないので、
頭が回らないわしは不安を募らせる。
そんな日々だった、最近は。

文章というのは、こういう場合、表現方法として一番制約がない。
古事記に書かれたその姿。
目はほおずきの様に赤く、首が8本、尻尾も8本、
体も山みたいに大きくて木が生えてる。
お腹は血が滴っているそうな。
書いたもん勝ち。
何だって表現できる。
それを、立体物として可視化しようとすると、非常に大変で、
誰だこれ書いたやつ!
無責任な描写しおって!
という感じ。

わしの頭を鍋として、閃いて出てくる結論をカレーとするならば、
とりあえず具材だけは放り込んでおかなくてはならぬ。
そんなわけで、自分なりのヤマタノオロチ像を結ぶため、
ここ数か月、いろいろと情報収集はした。
すなわち先人が、どのようにこの怪獣を視覚化してきたかということだ。

とりあえず、まずは画像検索してみると
この現代においては、ゲームキャラクターとしてのヤマタノオロチが多いことがわかる。
中でも最もよくあるパターンは、8匹の大蛇がグルグルとうねっている感じで、
部分的に雲に隠れていたりして全体像がよく見えない状態のもの。
体部分があるのかもよく分からない。
青森のねぶたとかで表現されるのもこのパターンが多い。
(ちなみに会田誠さんの巨大フジ隊員対キングギドラも、このパターン)
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もう一つのパターンとしては、犬みたいな四つ足の体があり、
首がとにかく8本生えている姿だ。
8本並べないといけないので、大変な肩幅になる。
東宝で平成に作られた「ヤマトタケル」という映画に出てくるヤマタノオロチもこのパターンだった。
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古い東宝映画の、三船敏郎が主演している「日本誕生」という映画も、
TSUTAYAで借りて観た。
それに出てくるヤマタノオロチは、
首から上が海から出ている感じで体は今一つよく見えないのだが、
尻尾はトゲが付いてて、チョボチョボしたホウキみたいでかわいい。
図式化するとこんな感じか。
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ちなみに、「シン・ゴジラ」を監督した庵野さん、特技監督の樋口さんらが所属していたグループが、
学生時代に自主制作した特撮映画「ヤマタノオロチの逆襲」も、
YouTubeで部分的に観た。
それは、ガメラに首が8本生えている感じでけっこう独特だった。
着ぐるみ化するためには、やはり胴体部分にボリュームが必要だったのだろう。
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他のビジュアル化の例としては、石見神楽におけるヤマタノオロチ退治の場面。
Youtubeにもたくさんあげられているので、観ることができたが、
やはり八又に蛇が分かれているというのを立体にするのはしんどいようで、
複数匹に蛇が分かれていた。
それらがとぐろを巻いたり火を吹いたりで、もう大変な迫力。
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といった感じで、とにかく皆、苦労している。
そして、それぞれの都合に合わせていろんな解釈をしている。

顔もいろいろなパターンがあった。
大きく分ければ、蛇タイプと龍タイプということになる。
どんな顔にするかは、非常に重要だ。
テンションを最高に上げるなら、ツノたくさんの龍のようになり、
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クール系にするなら、昔の天才てれびくんに出ていた「あっけら缶」のようになるだろう。
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飛行機はとうに降り、バスで益田駅に行き、
今は鉄道で海岸線を走って浜田駅に向かっている。
どんなヤマタノオロチにするか…
滞在制作開始を明日に控え、
わしは今、絶賛決めかねているのであった。

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by syun__kan | 2017-08-01 22:33 | 日記 | Comments(0)
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