学校では、わしは今年から美術担当なのだ。
だから生徒に与える題材を考えなければならない。
最近は、「ボックスアート」をスタートした。
ボックスアートとはなんぞ?というと、箱の中に立体や平面の創作物を配置する芸術のこと。
(プラモデルとかのおもちゃの箱絵も「ボックスアート」と呼ばれるけど、それとは別ね)
よく知らないけど、ジョセフ・コーネルという作家さんの作品とかが有名なよう。
健常の中高生なんかも、学校の美術でやったりするよね。
思春期とかの、自分の内面を、箱っていう形に投影しやすいのだろう。
絵を描く場合は、壁画とかをのぞき、紙やキャンバスに描くから、広さに限りがある。
世界の広さが、「はい、ここまでー!」と決まっているんだ。
枠という形で。
だから、その枠に対して、どれだけ大きく描き込むかによって、
100パーセントも、10パーセントも、自由自在に表現できる。
しかし、立体作品は、空間の中に置くから、
世界の広さが、「ここまでー」と決まっていない。
屋外なんかに置いたりしたら、それはもう。大変。
世界の広さは、ほんとに、リアルに世界の広さなのだ。
だから、100パーセントとか、10パーセントとかを表現し分けようとすると、難しい。
枠っていう、比較対象というか、目安がないんだね。
っていう部分を解消するのが、ボックスアートなんだと思う。
枠のある立体。立体とか作ったことなくても、枠があると作りやすいよね。
というか、何事も、枠があるとやりやすいよね。
0からすべて作りだすのは大変。
バンドやろうと思ったら、ボーカルと、ギターと、ベースと、ドラムが必要。
これも一つの枠だね。
もし、「バンド」という枠の存在しない世界で、
「みんなでかっこよく音楽やって、モテて、あわよくば仕事にしたいんだけど、なにが必要だろう??」
とか考えながら、0から何かやろうとしたら、大変だと思う。きっと最初は変な隊形が出来上がるはずだ。
けど、いろんな人が、長い時間をかけて「みんなで音楽やってモテる」を目指してあれこれやってるうちに、だんだん
「指揮者はいらない」「木魚もいらない」「細いパンツをはいたほうがいい」「中学生くらいから始めたほうがいい」「いつもニコニコしていないほうがいい」
とかがわかってきて、結局「ボーカルと、ギターと、ベースと、ドラム、クールな態度」に落ち着くのだろう。
わしは、一番初めの、変な隊形のバンドが見てみたいなあ。
にこやかに木魚を叩く。