ある決意を固めて帰り道、西友に寄った。
ジャージの短パンを買うのだ。もう長ズボンは暑い。
わしの職場は、ジャージがワークウェア。
夏はTシャツにジャージのズボン。
職場には体育系の人も多く、その方たちは、ジャージの着こなしにも年季が入っている。
良いジャージを着ている。
Nikeとかadidasとか、よく知らないけど、ロゴが入っていて、
デザインもかっこいい。
さりげなく個性を演出していらっしゃる。
わしは美術系なので、そういったジャージワールドの住人ではなかったのだけど、
この職場で働くにつれ、影響され、
pumaとか、そういったロゴマークの価値が分かるようになった。
いいよね、なんだか。
なんでだかはわからないけど、ロゴってさ。いいよね。
何のロゴマークも入っていないジャージに比べて、高価だけど、
その分オシャレだし、たぶん品質もいいはず。
しかしわしは、ボリさんが生まれてパパになり、奥さんは家庭に入り、
以前より計画的な経済政策の求められる状況になった。
わしの稼ぎなど、油断するとすーぐ無くなる。
慎重に、慎重に使う必要がある。
だからわしが今日固めている決意の内容は、そう…
ノーブランドの短パンを買うということ。
西友の紳士衣料のフロアに着いた。
ここはかなりの大型店舗で、ジャージの品揃えも豊富。
Nike、adidas、puma、mizuno、kaepa、ブランドが目白押し、
各社短パン百花繚乱。
まだ初夏なので、値下げも10パーセント止まり。
さあいらっしゃいいらっしゃい!!
短パンだよ短パン!!
…一応目を通すわし。
pumaに噛み付かれ、Nikeのカーブに引っ掛けられ、kaepaの背中合わせに体育座りしている人にひそひそされ、
ブランドマークに幻惑される。
やっぱりかっこいいですね、ブランド物…
しかし断ち切って、その奥にある、西友自社開発商品のコーナーに!
そこには980円の短パンたちがペラペラペラ~ン!と連続してハンガーに吊り下げられている。
うむ、地味だ。
黒や灰色、サイドに安直なラインが入っている。
ロゴマークなど、無論入っていない。
いいんだ、これで。
これを買いに来た。
…まてよ…
毎日履くものなんだから、良いものがいいんじゃないか…
ロゴマーク入ったズボン履けば、毎日気持ちよく過ごせるんじゃないか…
いやいや、そんな議論、もう済ませてきただろう。
それが一つの正論であることは良く知っている。
しかしだ、ロゴマーク一つにお金をかけている場合ではないんだ。
いや、ロゴマークだけではなく、品質だってブランド物の方が良いのでは?
現に、西友自社開発商品のジャージの生地を目の前にかざしてごらん?
透けるだろう?
Adidasの生地は透けないぜ?
それに関口、君は日本のデザインミュージアム実現に向けてのシンポジウムとか出てたよね?
デザインの重要性について語っていた人が、ノーブランドのジャージ履いてていいの…?
いや…
いいんだ。
家計を考えて節約するお父さんって素敵だろう?
ロゴマークなんかに頼らず、オリジナルの生き方を貫いて自分自身がブランドとなれ!
ということで、わしは無事、というか見事、ノーブランドの短パンを手に入れた。
また一つ、父になった。
はずだ。