今年印象的だった作品、2016
毎年末恒例の、今年鑑賞した作品を5つ挙げる日記を書こう。


「幸福」/岡村靖幸
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いやあ、岡村ちゃんはすごい。
何しろ、何があっても音楽をやり続けるのだ。

1986年のデビュー以来、
いわゆる激太りをした時もあったし、
3度も逮捕されて有罪判決を受けたこともあった。

それでもやるのだ。
お客さんの前に姿を現して、歌って踊るのだ。
太ってもやるのだ。
収監されても、釈放されたらまたやるのだ。

その時、お客さんからどんな目が向けられるか?
岡村ちゃんはどんな気持ちでそれを受け止めるのか?
ちょいと想像できない、これは。

しかし、何があってもやめないで、やり続けているという様子は、
だんだん凄みを帯びる。
「おお…」となる。
その事実自体が発熱するのだ。
その人にとって、それがそんなに大事なものであるという証明が、ぎらぎらと明らかになっていく。

才能も大事である。
事実、岡村靖幸は天才的なシンガーソングライターダンサーだ。
しかしそれ以上に、「やめない。何があってもやり続ける」という姿勢こそが、表現者にとって大事であると、
わしは教わった気がするのだ。
本作は、今年1月に出た、岡村ちゃんの新作アルバムである。



「ブレードランナー」
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今年は新幹線で広島に行く機会が多かった。
東京―広島間はけっこう遠いので、
車内でどう過ごすか対策が必要だった。
結局、パソコンでイヤホンしてDVDを観ればいいじゃないかという結論に達し、
何本か観た。
わしは全く映画通ではなく、どれを観ればよいのかさっぱりわからないので、
選ぶのは少し悩んだが、
ブレードランナーも選んだ。
学生の頃、同級生の彫刻科の田中君の下宿に行った時、
背表紙に手書きで「ブレードランナー」と書かれた、録画したと思われるVHSがあったからだ。
「田中君、ブレードランナー好きなんだ」
と思った記憶が、なぜか鮮明だ。
田中君は別に特別親しいわけではなかったが、下宿が近かった。
何故家に行ったのかは思い出せないが、親しかった同じく近所の松井さんに誘われたのかもしれない。
五分刈りで目がきれいで、寡黙な青年だった。
田中君を分析するための手立てを得るために、見渡した時に目に入ったのがブレードランナーだったのだろう。
とは言っても、わしはそれを観たことがなかったのだが。
今年、十数年越しに、それが解析された。

要するに、「手作りカオス」の迫力に支えられた映画だったと思う。
近未来の、雑然とした雨の降りしきる街並み、
コンピュータグラフィックスも良いけど、
一つ一つ作った看板、電気を通わせたネオン、水を降らせた雨、本当に歩いている人たちによる雑踏は、たまらなく魅力的だ。
わしが広島で作ったのも「手作りカオス」を目指した作品だったので、
少し勇気をもらったかもしれない。

ただし、これを観たからと言っても、
田中君のことはまださっぱり分からない。



「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」
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「シン・ゴジラ」については、8月1日9月4日の日記ですでに書いた。
ここでは、なかなか「シン・ゴジラ」を観てくれない奥さんについて記述したが、
結局、奥さんは、わしの勧めに応じ、
単身、「シン・ゴジラ」を観に行ってくれたのである。
そして、その後、彼女は一人で、自発的に、
いわゆる4DXで、もう一度観に行ったのである。

嬉しそうに4DXの感想を語る奥さんだが、
わしはむしろ一度だけ観た記憶が徐々に遠くなっていて、応じきれない部分もあったりして、
しかしながら好きな作品を身近な人と共有できて良かった良かった。

そのかわりと言っては何だが、
わしは今まで観たことのなかった、しかし奥さんは良く知っている、
庵野監督の作品である、
「エヴァンゲリオン」の、劇場版を、DVDで観ることになったのである。
中学生の頃、同世代はみんな観ていたが、
プロレスと嘉門達夫にしか興味がなかったわしは一寸も触れたことのなかった、
綾波レイさん、こんにちは。
碇シンジさん、こんにちは。今日も悩んで大変ですね。
アスカ・ラングレーさんは、出てこなかった。
この映画の続編である、「劇場版エヴァンゲリオン・破」には出てくるそうだが、
それは観ないでおこう…
いや、本作がつまらなかったわけではない。
面白かった。
このシリーズが、「序」「破」と続いて、その後奥さん曰くわけのわからない「Q」へと続き、
完結編となるはずの4作目が、待てど暮らせど出ず、
ファンは悶々としていると。
奥さんに聞いた。
「破」を観てしまうと、続きが気になり、
その悶々に巻き込まれてしまうのではないかと危惧したので、
このくらいで手を引いておくことにした。



「PPAP」/ピコ太郎
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テレビを持っていないため、
世の中のトレンドから取り残されることが常の関口だが、
この作品はテレビよりインターネット発であったため、
一か月遅れくらいでこの関口まで届いた。
まあ、きっかけはテレビだったが。
わしは朝、眠い目で洗い物しながら、棚に置いたガラケーで、ワンセグで「めざましテレビ」を見る。
数年前に知り合った方が「めざましテレビ」のファンだったことにより発生した習慣だが、
なかなか良いのだ。
世の中のことは、これで大体わかる。
そこで紹介され、出会った、こちらのペンとリンゴとパイナップルの話。
わしはハマってしまった…
一か月間くらい、大体毎日見た。
はっきり言って、日々の様々な不安が、
これを見ると消えるのだ。
無意味化による魂の救済。
これが、アートの役割の一つなのかもしれない。

また、YouTubeの、視聴者のコメント欄を見るのも好きだった。
「おもしろい」という意見が多数の一方、
「すぐ消える」「調子に乗ってる」という後ろ向きなコメントも。
インターネットというメディアも新しいとは言いつつだいぶ歴史を重ね、
利用者の心理の分析や情報の玉石の判断が進んできたと思う。
一つ言えるのは、
何もやっていない人より、何かやっている人の方が、絶対にえらい。



「宿替え」/桂枝雀
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平安寿子さんの小説をきっかけに、落語に少し興味を持った。
今の時代はYouTubeがある。
まず見たのは、江戸落語の雄、小説によると落語の神様と称される、古今亭志ん朝。
確かに、見事だった。
聴いていて本当に心地よい、音楽のようなリズム感。
押さえの効いた物腰。
落語の粋というものが少し理解できた。

次に視聴したのが、大阪の爆笑王と称される、この桂枝雀。
これは、衝撃的だった。
非常に面白いのだが、何となく怖いのである。
細すぎて目の表情が読み取れない。
いや、一応笑顔ではあるのだが、
終始一貫して笑顔なので逆に怖い。
そして、受けても受けなくても、電車道の様にひたすらギャグを放ち続けるのである。
(もちろん基本的には爆笑なのだが、あまり反応のない時もある)
そして座布団からはみ出さんばかりに、ひたすら動きまくる。

わしは何となく、「ダイナマイトキッドだ」と思った。
ステロイドで筋肉をパンパンにして、激しい戦いを繰り広げ、
あっという間に体を壊して歩けなくなってしまった、刹那的で破滅的なプロレスラー。

別に薬物を使ったわけではないが、
桂さんは落語の探求心のあまり自分を追い込んでしまったか、自殺を図り、病床で亡くなったとのこと。
自分の心身を省みないほど、振り切った者の表現の凄みには、さすがに誰もかなわない。


というわけで、今年も良い作品との出会いがあった。
自分の造形活動に示唆を与えてくれるものが多かった気がする。
来年も、良い出会いがありますように!!
by syun__kan | 2016-12-25 21:44 | 日記 | Comments(0)
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