ミニチュア・ピンシャーであるハルちゃんを飼い始めて以降、
たびたび「去勢」の話は出た。
「病気リスク減」
「性格が大人しくなる」
等の理由により。
しかしわしは、どうしても、取れなかった。
TAMAを。
ハルちゃんは、ブリーダーから買った犬だが、
買った時点から、尻尾を短く切られていた。
そうするのが習慣の様で、
問答無用だった。
外国では、尻尾切りを「良くない」とみなし、
生まれたままの長いヒョロヒョロした尻尾でミニチュア・ピンシャーを飼っていたりするそうだが、
日本で見かけるミニピンは、
ほぼ全て、尻尾を切られている。
個人的には、ヒョロヒョロのままで、全然良いと思う。
古くは、断耳の習慣もあったとのこと。
耳を短く切るのだ。
ハルちゃんに関して言えば、それは、されてなかった。
ぺにゃっと垂れた、きくらげのような耳を持っている。
なんで、あるものを取っちゃうんだろう?
ポイポイポイと。
これ以上、取りたくないぜ。
それに、自分に置き換えてしまう面もある。
TAMA…
想像すると、つい、マイケル・ジャクソンの様に、押さえてしまう。
男が、男として、男であるための。
そういうものではないのか。
それに、全身麻酔のリスクもある。
そんなこんなで、6年以上、取らずに来た。
ほんと、トイレに関しては、しつからない子じゃった。
まあそれでも、可愛かった。
しかし前月、前足にできものができ、
全身麻酔で切除することになった。
そこで、信頼する獣医の先生から、
「ついでTAMA取っちゃいませんか?」
とのこと。
この先生に対しては、全幅の信頼を置いているので、
提案されたことには逆らわないことにしている。
どうせ全身麻酔掛けるなら、やるか。
やってしまいましょう。
そんなこんなで、ハルちゃんは6歳にしてついに、TAMA無しになった。
すると、ほぼ全く、トイレを失敗しなくなったのである。
引っ越したばかりの新居には、ハルちゃんのトイレ失敗対策をあれこれ案じていたが、
あまり心配なくなった。
猫のコマちゃんに夜な夜なマウンティングしたりも、なくなった。
おまえをアンポンタンにしていたのは、TAMAだったのか。
トイレを失敗しなくなったハルちゃんは、とても飼いやすい。
ハルちゃんは、今までに増して、愛される存在になった。
その時、旧居のリフォーム代の請求の電話が来た。
ペットのトイレ失敗による被害額は、礼金敷金をはるかに超え…
…
わしは何となく、男に生まれるということの業の深さを知った。