夜遅くに犬の散歩に行く。
コースは2、3パターンある。
そのうち一つは、広い畑の真ん中のあぜ道を行くのだが、
そこを通る途中、いつも畑の真ん中で、
犬がハイテンションになる。
ハタと立ち止まり、一方向にビュッと走ってリードがビュンとなってグッと引き戻され、
しかしまた周囲を気にして立ち止まり、
ビュン!と走って綱が伸び切ってグインとなる。
暗闇の散歩道で、さも周囲に何かいるかのようにテンションを上げられるとわしも、
何だかちょっと気になるのだが、
しかしわしはいつも、一日の終わりのリラックスタイムとしてiPodで音楽を聴いているので、
イヤホンをいちいち外すのもめんどくさく、
「まあうちの犬はアンポンタンだから、そんなもんだろ」
と思って、
犬が何かを見ているのか、何か音がするのか、
自分で確認することはしなかった。
気にせず散歩を続けた。
めんどくささは少々の不気味さに勝るのだった。
しかし今日は、イヤホンをしていないのだった。
珍しく、何かの巡り合わせで仕事が早く終わり、
18時前に家に着いたら、
奥さんが夕食の支度をしながら疲れていて、
疲れているというのはこの場合、要するに食事作っても3歳の娘がああだこうだ言って食べなかったりして揉める最近の様子に辟易して自棄で鬱で諸行無常ってことなので、
じゃあ外食行こう!おごるよ!
と提案し、
家族で近所の和食レストランに歩いて行って、
わしと奥さんはややパーッと飲酒してきた暁に、
わしは犬の散歩に出かけたのだが、
ほろ酔い気分で音楽を聴くのは若干不用心なので、
イヤホンをしていないということなのであった。
果たして、今日も犬は夜中の畑の真ん中でハイテンションとなり、
わしは周囲の現状を把握できたのだが・・・
果たして・・・
その真実とは・・・
本当に、何も、一切なんにもないのに、
ただハイテンションになっているだけであった。
ノーリーズンだった。
何もいないし何も聞こえない。
だけど犬ハイテンション。
犬、何の訳もなくハイテンション。
ビュンビュン走って紐がピンッとなってグン!と引き戻される。
ビュンとなってピンとなってグン。
ただ、ひたすら。
それだけ。
何もなかった。
そしてわしは、このことを皆様に報告しなければ、と思った。
ほろ酔い気分の中で。
だからこの日記を書いています。
明日わしが、投稿済のこの日記を読んで、
この犬がビュンとなったという日記を読んで、自分がどんな気持ちになるかは、
正直、わからない。