燃え続けるもの
日本における、カーリング普及の発祥地は、
北海道の、「常呂」という場所である。

今年のオリンピックの銅メダルで、知ったのではない。
このことを知ったのは、2016年の夏だ。
滞在制作で広島を訪れていたわしは、
偶然、同地で開催されていた、高校総合文化祭の、演劇部門の発表を観に行き、
北海道代表の北見北斗高等学校の「常呂から TOKOROcurler 」という劇を見て、
涙が止まらなくなった。
まだ日本で知られていないカーリングに憑りつかれ、常呂で広めようとする父と、
反発する思春期の娘を中心とした、
事実を基にした創作劇なのだが、
ゴダイゴの曲も相まって、とくにラストシーンは鮮烈で、感動を受け、
未だにたまに思い出す。

ちなみに広島県代表校は、原爆を題材にしていた。
自分のバックボーンを、
ポジティブなことでも、ネガティブなことでも、
糧として活かし、作品に昇華する高校生たちの姿に、
かなり天啓的なものを得た。

わしが2012年に岡本太郎賞を獲った「感性ネジ」という作品は、
東日本大震災で抱いた思いを、発想の源にしている。
しかしわしは、東北出身ではないし、
大して被災していない。

7年前の震災の時は、職場の、東京都練馬区の学校にいた。
授業中に揺れ、生徒を机の下になるべく隠れさせたが、
隠れ切っていない体のすぐ脇の棚がぐらぐら揺れた。
あの棚が、倒れてきていたら、どうなっただろう、
と、思うことはある。
揺れが収まったのち、グランドに皆で避難し、
余震でビリビリと震える校舎の窓を見ていた。

でも結局はそれまでだった。
放射線量も、避難がどうこうという話にはならなかった。
そしてわしはテレビを持っていなかった。
津波等の映像も、ガラケーのワンセグで、
ほんの少し見ただけだった。
それだけの経験から、受けたサムシングを、込めて作ったのが、「感性ネジ」だった。
もちろん、精神的に受けた影響は、非常に大きい。
込めた思いは、自分なりに極めて本物だ。
しかし本当に被災した方に比べたら、「それだけ」と言わざるを得ない。
「それだけ」なのに、賞まで獲って、
お前、何様だよという気持ちが、
ずっとうっすらとあった。
常呂の高校生が作る劇、広島の高校生が作る原爆の劇とは話が違う。
お前、被災してないじゃんという、
後ろめたさのようなもの。

それが、この間三宅君と対談し、
自作について語る機会があって、
そして1年前に購入したテレビにより、
ここ最近の震災関連の番組において、津波が押し寄せ、
電柱を倒していく映像を初めて観て、
自問が再燃した。

原爆が、70年以上たった今でも、
「生きた問題」として有り続けるのは、
それがあまりに「強烈な不条理」だったからだろう。
「強烈な不条理」は、語っても語っても、納得いく答えに辿り着く訳がないのである。
東北の方々にとっては、震災が「強烈な不条理」だった。
だから、震災に関する問題や思考や表現は、
今後もずっと、答えを持たずに燃え続けるに違いない。
わしの自問もだ。

言葉に限界が生じたときに、
人に寄り添えるのがアートかもしれない。
岡本太郎作品の中で、わしが一番好きなのは、
実は生田緑地にある「母の塔」だ。
f0177496_22411443.jpg
この塔は、大樹のような母の、幹がスパッと切られ、
母は死に、
しかしその断面から、新しい命がどんどん生えていく様を表していると、
わしは思っている。
(この解釈を、太郎記念館の学芸員さんに話したら、
「それは違います」と、ちょっと驚くくらい正面から否定されたがw)

今もなお活躍されている、三宅一生さんは、幼少期に広島で被爆し、
イサム・ノグチの設計により爆心地近くに架けられた二つの橋に影響され、
デザインの道を歩んだ。

問題も思考も表現も、ずっとずっと燃え続ける。

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by syun__kan | 2018-03-11 22:53 | 日記 | Comments(0)
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現代芸術家、関口光太郎の日記。
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