ハシビロコウ/関口、オリパラやめるってよ。
ハシビロコウ/関口、オリパラやめるってよ。_f0177496_20571330.jpeg
最近だらだらと作っていたハシビロコウが、ようやくできました。
ハシビロコウは、アフリカ大陸に生息する鳥です。
水辺で、近くに魚が来るのを待ち伏せるため、まるで彫刻のように、じーっと動かずに固まります。
数時間、身じろぎ一つしないこともあります。
その姿や表情が、意味あり気で、
何かこう、キャラもの好きな日本人の心を捉えるのか、
世界で飼育されている40~50羽のうち、14羽が日本国内だそうです。Wikipediaによると。

というようなことで、
「2020東京五輪に向けて、毎日何か作る」と称し、
この3年半くらい、
毎日とはいきませんでしたが、
まあなるべく頑張ってちょこちょこと何か作ってきましたが、
今日で終わります。

理由としては、まず一つは、
率直に言えば、最初にぶち上げたような、「60メートルの超大作」のような依頼が、
結局というか、案の定というか、当然というか、
来なかったということになります。

何度目かのおさらいになりますが、
5年くらい前に、
どういうわけかお鉢が回ってきて、
オリンピック・パラリンピックに向けた文化施策の会議に呼ばれ、
文化庁で、一流アーティストや文科大臣を前にしてパワーポイントで自分の案を発表したことがきっかけで、その気になって、
勝手に何やら作り始めてしまったわけですが、
結局、あの会議は、あまり具体的なものが求められているわけではなかったのか、
わしの案が具体化する方向に動くといったことは何もなく。

本当は、依頼が無いなら、
そしてそれがどうしても実現させたいものであれば、
協賛を募ったりとかして、
自分から動くべきなのでしょうが、
できませんでした。すみません。
去年の別府にしろ、その前の前橋や島根や広島にしろ、
わしは依頼を受け、
事務的なことや制作場所等、バックアップを受けて、
何とか活動できています。
そういったバックアップ抜きで、自分で裏方までやりながらでは、
わしは別府、前橋、島根、広島を超えるようなものは、絶対作れないのです。

オリパラ関係の依頼は何もありませんが、
その他の依頼なら、
こんなわしにも、今年もちょこちょこあります。
これからで言うと、
6月に東京都内でワークショップ、
7月に福島で展示とワークショップ、
7月末に都内でワークショップ、
秋に愛知県内で2つ展示とワークショップ。
どれも、すごく大きな企画ではないですが、
せっかくいただいた、ありがたいお話、
ぜひ頑張りたいです。

というわけで、
五輪どうこうと言い続けるよりは、
いただいたお話に気持ちを向ける方が良いと思ったので、
やめます。

もう一つの理由としては、
皆様ご存じの通り、
今年の、2020東京オリンピック・パラリンピックが、
新型コロナウィルスの影響で、今年開催されるかよく分からない状況になっている、
ということがあります。

非常に月並みな感想ですが、
オリンピック・パラリンピックというのは、平和の祭典なのだ、ということが良く分かりました。
以前は、国ごとに戦うのに何故「平和の祭典」なんだ?と思っていましたが、
戦争も、ウィルスも、異常気象も地震も何も無いからこそ、実施できるものなんだな、
ということに、ようやく気付きました。
「逆説的に平和の祭典」なのですね。
平和ボケしていました。

コロナウィルスは社会に深刻な影響を及ぼしていますが、
わしは職業柄もあり、やはり学校教育の機会が失われていることが気掛かりです。
わしの職場である学校も休校になってしまいました。
そういった、日々の生活の土台、
つまりケーキでいうとスポンジの部分がしっかりしていない中で、
オリパラみたいな、トッピングのことを考えられんな、
というのが、
茫然とした頭でぼんやり思うことです。

娘の幼稚園の卒園式に、わしは出られませんでしたが、
奥さんが撮ってきてくれたビデオを見ると、
人が密集しないように二部制にするなど配慮された卒園式で、
園長先生は、涙ながらに、
「我慢して、やり過ごす、というのも、大事な力」
とおっしゃっていました。
なるほど、と思いました。
そうなのだ。
動かずに、じっとしているのも大事なことなのだ。
今はそういう時なのだ。

まるで、そう、

ハシビロコウのようにな。

彫刻のように動かず。

ハシビロコウを作ったのは、何となくだったけど、
タイミング的にはちょうど良かった。
偶然なのか何なのか分からないけど。

アートをやっているときは、
偶然が、必然に思えるほどすっぽりとはまる、という瞬間は、
それに従った方が良い、
という経験則があります。

例えば、良い作品ができる時は、
吉兆というか、
制作中に木材が必要になった時、たまたまその場にあった木材がちょうど良い長さであるとか、そういう、
偶然が、必然に思えるほどすっぽりとはまる瞬間があります。
そういう時は、その方向で制作を進めていくと良いのです。
逆にそういう瞬間が無い時は、あんまりうまく行きません。
立ち止まって再考したほうが良かったりします。
今回の場合は、依頼が無いというわしの状況、世の中の状況と園長の話、ハシビロコウの姿みたいなことが、
すっぽりとはまったので、
それに従う、
つまり、ハシビロコウがじっと立っている姿を最後に「2020東京五輪に向けて、毎日何か作る」を凍結するのが良い、
ということになりました。

実現せずに申し訳ありませんでした。
この3年半くらい、
2020を意識して制作するのは、
まるで東京五輪を目指す選手の様で、楽しかったです。
そして、2020には結び付きませんでしたが、
作っていたパーツは、島根や前橋や別府での作品の一部になっていきました。
2020でやりたかったことは、それらに分散されて実現したと、
自分勝手ながら思っています。

これからも、何か作ったら、たまにブログに載せていきます。
ハシビロコウは、ただ止まっているのではなく、
魚が近づいてくるチャンスを待っているのです。

# by syun__kan | 2020-03-22 01:09 | 2020東京五輪に向けて、毎日何か作る | Comments(0)
顔を手直し
顔を手直し_f0177496_01064157.jpeg

# by syun__kan | 2020-03-21 01:06 | 2020東京五輪に向けて、毎日何か作る | Comments(0)
足_f0177496_13011005.jpeg

# by syun__kan | 2020-03-20 13:00 | 2020東京五輪に向けて、毎日何か作る | Comments(0)
上毛新聞に掲載
上毛新聞に掲載_f0177496_23345606.jpg
「前橋の美術2020」に展示している期間中、
上毛新聞に出品作品を紹介する連載があり、
2月27日に、関口の作品を、
学芸員の若山さんが紹介してくれました。
愛ある文をありがとうございます。

# by syun__kan | 2020-03-17 23:38 | 日記 | Comments(0)
ギムさん
幼稚園年長の娘はコロナウィルスの影響で休園になり、
小学校入学への狭間の期間を1カ月近く主に自宅で過ごすことになった。
本来なら、幼稚園という、ある意味お花畑的な世界観に別れを告げ、
のっぴきならない義務教育開始への序章として親も子も、感傷に浸っても構わないというような3月であったはずだが、
全国の多くの卒園・卒業生と同様に、あまりに唐突に前段階はバツッと終わり、
次の段階までの空白期間に漂う空気は不穏で、
いや空気にさえ警戒しなきゃいけないという、そんな状況。

まあそれでもやっていかなきゃならぬ、というようなことで、
我が家では文字と数の学習ドリルを買って、娘にやらせようかという話になり。
じゃあ探すか、と言って、奥さんはスマホで小1の学習ドリルを検索し始め、
そして「こんなのどう」として、見つけ出したのが、
「すみっコぐらし」のドリル。
「すみっコぐらし」は、娘が好きなキャラクター。

そうかそうか、娘は「すみっコぐらし」好きだし、
「わーすみっこだー」とか言って楽しんで取り掛かれるよね。
と、思ったが、何か「ん?」と引っ掛かる。

ん?
義務教育ってそういうんだっけ?
好きなキャラクターだからやるとか、好きなキャラクターじゃないからやらないとか、
小学校の世界観てそういうんじゃなかったような?
そういうのは、幼稚園で終わったのでは?
有無を言わさず、やることはやる、
それが義務、義務教育、なのではなかったっけ?

という気もしたが、まあ3月末日まで未就学児と思い直し、
我が家は「すみっコぐらし」のドリルを購入。
わしは平日は仕事だが、奥さんは家にいるので、娘に付き添い、
それを一日数ページ進める。
土日は、わしも自宅にいたので、
娘のドリルに付き添う。
まずは計算。

「ねこの かずを かぞえましょう。」
「すずめが 3わ います。 1わ とんでいきました。のこりは なんわでしょう。」
「しきを かきましょう。」

は、始まった!
義務教育が。
義務である。
「すみっコぐらし」のドリルであるから、
ページにはキャラクターのイラストがふんだんに配置され、
フルカラーで楽しい雰囲気ではあるが、
しかしそこには確固とした義務の断片が見える。

言ってみれば、目の前にイラストと共に提示された「ねこ」も、「すずめ」も、
わしらの生活にとって、まったく関係ない。
ねこが何匹いようと、すずめが飛ぼうと、どうでもよいのである。
でも、
「ねこ?!すずめ?!知らないよ、どうでもいいよそんなもん!」
等と、言ってはいけないのである。
「かぞえましょう。」
と、本文さんに言われている。
「かぞえましょう。」
は、すみっコぐらしのキャラクターの声ではなく、
娘でもわしの声でもない。
義務さんの声だ。
ギム・ホンブンさんの声である。
わしの中で、ドリルの中から子どもに呼びかける天の声の主、ギムさんのイメージが形作られる。
ギムさんは、学習指導要領に則った内容の学習に取り掛かるように勧める、先生の妖精的なサムシングだ。
これに逆らうわけにはいかないのである。
ねこやすずめが、どんなに自分に関係なくても、
数えずしては先に進めないのである。

幼児期は、本などに載っている、
子どもに対して何かを行うようにいざなう文の語尾は、
「してみよう!」
とかだった。

「ここに ケーキの シールを はってみよう!」
「きりんさんに いろを ぬってみよう。」

と。
そこに、義務の香りはしない。
気が向いたらやってみませんか、やったら面白いですよという、
相手(幼児)の機嫌を慮るような態度を感じる。
「権利の提示」のような。
しかし「ましょう。」は、似ているようで絶妙に性質が違う。
やらないという選択肢は、原則として無いのである。
義務教育開始と共に始まる、魔性の「ましょう。」

娘のドリルを見て、記憶がふわーっとよみがえった。
わしは語尾に敏感だった。
小さい子どものころから。
語尾には、発信者の意思やスタンスが表れているからだ。

小学校低学年のころ、プリントやテストに現れる「ましょう。」の語尾に、
わしは、まあ子どもなりに慣れていたのだが、
ある時。3年生になったときだったかな?2年生になったときだったかな?
テストの本文の語尾が、突然「なさい。」になったのである。

「式を 書きなさい。」
「漢字で 書きなさい。」

進級直後のわしは、これに強烈に違和感を持った。
何か、キャラ変わってる!
ギム・ホンブンさん、キャラ変わってる!

今まで、義務的ではありつつも、まだ、丁寧語というか、
相手が義務を被る負荷を考えてあげてるというか、
そういう感じの「ましょう。」で話してくれてたのに、
突然、命令的になっている!
「ましょう。」で言われたことには、例え「やだよー」と言って逆らったとしても、
「だめよ、やらないと困るのよ、さあ、やりましょう。」といなしてくれそうな雰囲気があったが、
「なさい。」は、何か逆らったら怒られる感じがする!

だからわしは、最初のころ、
本文の「なさい。」を、全て二重線で消して、「ましょう。」に書き直していた。
まだ、へらへらしたはなたれ小僧でいたかったのである。
しかし、いつまで経っても、
配布されるテストやプリントの語尾は「なさい。」のままだったので、
やがてあきらめた。
というか、「なさい。」的世界観に順応していった。

中学とか、高校になった時、語尾は、さらに断固としたものになる。
すなわち、「せよ。」である。

「その答えを求めよ。」
「考えを述べよ。」
「図で表せ。」

ギム・ホンブンさんは、いつの間にか腕章の付いたブレザーを着ている。
「ましょう。」のころは女性のイメージだったのに、
今や、肩幅広く、ミリタリーブーツを履き、日焼けした肌にしわが刻まれ、
手を後ろに組み、眼光鋭くこちらを見ている。
「問いに答えよ。」と。
もう、「やだよー」なんて、逆らう気も起きない。
そんなことしたら、何だか大変なことをされるかもしれない。
いや…意外と、何もないかもしれない。
「やだよー」と言って、逃げ去るわしを、
一瞥するだけで、身じろぎ一つしないかもしれない。
「去る者は去れ。決めるのはお前だ」と言って、
追いかけてくれさえしないかもしれない。

まあ、ちょっと怖いけど、それはそれで、自由の獲得かもしれないよね。
と、遠いところまでは走ってきたわしは、小さく見えるギムさんに目をやり、ややひきつった笑いを浮かべる。
何しろ高校以降は義務教育ではない。
以降ずーっと、大人になるまで、というか最後まで、義務教育は無い。
そこから先は、自由&責任の世界である。
目の前にクリアすべき「本文」が現れることも、ほとんどない。
何をクリアすべきかは自分で決める。
楽しいことは確かだし、しかし怖いか?と考えれば、もうめちゃくちゃ怖い。
「ハメハメハ大王」の歌くらいに楽しく感じることもあれば、
「とおりゃんせ」の歌くらい怖いこともある。

というようなことを思い、娘の数のドリルを、「ちょっと見してね」と言って、先の方までページをめくってみた。
もちろん語尾は「ましょう。」のまま。
だが、最初フルカラーだったページは、やがて2色刷りに、最後にはモノクロに。
ふんだんに配置されていたかわいいキャラクターのイラストも、徐々に減り、
文字通り隅っこに一匹いる程度に。
ドリルの終盤、モノクロの、ほとんどキャラクターのいないページに、
ただひたすら20問、加減法の問題が並んでいる様子を見て、
腕章付きギム・ホンブンさんの眼光を思い出し、
わしは身震いがした。

しかしながら、わしも教員の端くれなのであり、
ギムさん側の人間とも言える。
教育の質は色々だし、
先生も友達も色んな人がいるわけで、
どこをどう巡り合うかなんてことは、もう完全に運である。
どうか、イケメンとかでなくて良いから、味わい深い素敵なギム・ホンブンさんに巡り合えますように。

そして娘は、イラストが減っても、
モノクロでも、
けっこう楽しそうにドリルをやっているのである。
相変わらずわしは、考えすぎのアンポンタンなのかもしれない。
そして、まずは、
通常通りの学校教育が再開されることを祈る。

# by syun__kan | 2020-03-14 23:47 | 日記 | Comments(0)



現代芸術家、関口光太郎の日記。
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